ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2017年11月17日
 DARK BLACK

 11月15日、MUTATIONのライヴを渋谷 TSUTAYA O-NESTへ観に行ったのだった。現在、再結成後のTHE WILDHEARTSを含め、ジンジャー(ワイルドハート)が関わっているいくつかのプロジェクトのうち、最も激しいサウンドを出しているのがMUTATIONであって、それを興味深く見ている自分がいたからである。しかし、ここまでアングリーなムードと緊張感のピリピリと張り詰めたショーを目の当たりにするのは、いやあ、実に久しぶりのことであったよ、と思う。

 バンドの編成は、ジンジャーがギターとヴォーカル、EXIT INTERNATIONALのスコット・リー・アンドリュースがベースとヴォーカル、YOUNG LEGIONNAIREのデンゼル・ピアソンがドラム、というトリオである。ライヴを行うにあたって、サード・アルバムの『DARK BLACK』(2017年)を共作したジンジャーとスコットの2人に、デンゼルが加わった形だ。が、正直、この日のパフォーマンスの中核を担っていたのは、デンゼルの猛烈なドラムだったのではないか。ドラムのキットがステージの前方に出、スコットやジンジャーと横並びになったちょうどその真ん中から叩き出されるリズムには、主役に近い貫禄さえ備わっていた。

 反面、体調の不備と機材のトラブルとで悪い方向にアピールが転がってしまったのは、スコットであった。その危うさがジンジャーやデンゼルにピリピリと張り詰めたアングリーなムードと緊張感とをもたらし、それは次第にショーの全体へと及んでいく。メンバー間のコミュニケーションが明らかにギスギスとし、一触即発に思われる場面もあった。まったくフレンドリーとは呼ばれぬ状態のまま演奏は進められた。けれど、それは必ずしもMUTATIONの音楽性を損なうものではなかった、というのが個人的な感想である。

 MUTATIONの音楽性には、ノイズ・ミュージックやインダストリアル・メタルからインスピレーションが多く含まれている。『DARK BLACK』の「DEVOLUTION」では、かねてよりジンジャーと交流のあるデヴィン・タウンゼントがフィーチャリングされているが、STRAPPING YOUNG LADからの影響をパンク・ロックやグラインドコアの方面に寄せていったらこうなる、との解釈も可能であろう。ジンジャーのキャリアに則せば、THE WILDHEARTSの『ENDLESS NAMELESS』(97年)を引き合いに出せなくはない。基本の路線は、スコットがパートナーとなる以前の『THE FRANKENSTEIN EFFECT』(2013年)や『ERROR 500』(2013年)で既に当たりがつけられていたものだとはいえ、EXIT INTERNATIONALとの共通項をふんだんにしている。

 MUTATIONが指向しているのは、要するにマッシヴであるような音塊を足場に築き上げられたバンド・スタイルのサウンドなのである。メロディアスなパートはあるが、ポップであることやキャッチーであることよりもラウドであることやヘヴィであることを重視している。その無愛想な楽曲の質と、この日の殺伐としたテンションには、どこか類似したものがある。

 もちろん、スコットのモチベーションが途中から散漫であった点は、マイナスととらえられるべきであろう。もうちょっとベースの低音が強力であったなら、インパクトは一段階も二段階も上になっていたのかもしれない。しかし、何せ、初の来日公演だ。万全なコンディションの演奏がどのようなものかは知らない。だが、荒ぶっている風ですらある轟音に直情的なカタルシスが宿っていたのは確かだといえる。ジンジャーが不出来を謝罪した言葉ぐらいしかMCはなく、怒濤のごとく突っ走る。およそ1時間弱のパフォーマンスは、整合性や完成度だけでは計れない。破綻を寸前のところで免れるのにも似たスリルを持っていた。
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2017年08月03日
 Mourning, Resistance, Celebration [Analog]

 FARのフロントマンであるジョナ・マトランガと元JAWBOXにしてプロデューサーとしても知られるJ.ロビンスの合流は、90年代の(EMOと呼ばれるような)ポスト・ハードコアのファンにとって、おお、と興味を引かれるものであろう。CAMORRAが、それだ。が、ファーストEP『MOURNING, RESISTANCE, CELEBRATION』に特徴的なスタイルをもたらしているのは、J.ロビンスと同じく元JAWBOXであり、ドラムで参加しているザック・バロカスの変拍子を交えたあの独特なリズム感なのではないかと思う。どちらかといえば、ではあるけれど、J.ロビンスのキャリアで見るより、ジョナ・マトランガのONELINEDRAWINGに近いアンビエントな作風となっており、JAWBOXやBURNING AIRLINES、 CHANNELS、FARやNEW END ORIGINAL等々にあったロック・バンド的なダイナミズムは極力抑えられている。ギターの主張も控えめであって、メインのヴォーカルをジョナに任せたJ.ロビンスの役割は、おそらく、キーボードの響きが楽曲の方向性をガイドしていくかのようなサウンドのコーディネイトなのかもしれない。そのキーボードのリフとザック・バロカスによるドラムのマッチングには、プログレッシヴ・ロックの構築美を彷彿とさせるものがある。もちろん、魂からこぼれる血や涙をイメージさせるジョナ・マトランガのナイーヴな歌声は健在だし、希望を手探りするなかに生じうるエモーションを如実にしているのだけれど、それでもやはり、特筆したくなるのは、ドラムのパートなのだった。CAMORRAならではの色合いに、どれだけザック・バロカスが不可欠であるのかは、1曲目「BETWEEN THE WORLD AND ME」の導入から、はっきりと窺える。ア・カペラではじまり、女性のコーラスとドラムのみを加えた3曲目「PARTING FRIENDS」には(小品なのに)胸を衝かれる。加速を得ていくドラムに合わせ、ジョナ・マトランガのヴォーカルが衝動のはち切れた叫びへと達する4曲目「BLACK WHITE GIRL BOY」のクライマックスは、圧巻である。

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2017年06月25日
 Two Parts Viper

 ベースレスのディオという編成は、ロック・バンドのスタイルとしては今や広く認められたものに違いない。元NROMA JEAN、元THE CHARIOTのヴォーカル、ジョシュ・スコギンの'68も、彼自身がギターを兼ね、ドラムとの2人組となっている。これまでのキャリアからするとハードコアの資質がおおもとにあるのだろうが、サウンドの方向性は90年代のアメリカン・オルタナティヴ、インディ・ロックをイメージさせる。しいて喩えるなら、NIRVANAとTHE JON SUPENCER BLUES EXPOSIONのミックスを思わせるところがある。まあ、NIRVANAにせよTHE JON SUPENCER BLUES EXPOSIONにせよハードコアの文脈とかけ離れているわけではないのだけれど、NROMA JEANにあったメタリックな響きやTHE CHARIOTにおけるカオティックなアプローチとはいくらか距離をとったサウンドを'68は抱いているのだ。ロー・ファイの濁りを残すことでギターとドラムの簡素なダイナミズムに鋭さが加わり、演奏時のテンションがそのまま楽曲の価値を底上げしているかのような印象である。ジョシュのヴォーカルは相変わらずいきり立っているし、本当にジョン・スペンサーみたいなシャウトを聴かせることもある。ただし、研ぎ澄まされたまでのインパクトに欠け、ちょっとばかり物足りなさを覚えるのも確か。この手の出力が勝負なサウンドにとってインパクトはすごく大事よ、であろう。それは2014年のファースト・アルバム『IN HUMOR AND SADNESS』にも感じたことで、残念ながらセカンド・アルバムの『TWO PARTS VIPER』でも払拭されてはいない。たぶん、ライヴだとスタジオ音源を遥かに上回った破壊力が発揮されるのだろうな、と思う。そう思えてしまうことが歯痒い。

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2017年04月13日
 Perish

 ギター・レスやベース・レスの2人組で活動しているバンドも珍しくはない昨今である。分厚い音響を重視したドゥームやスラッジの系統であってさえ、ぱっと思いつくかぎり、OMやBLACK COBRA、JUCIFER、BELL WITCH等々が挙げられる。それらのバンドが証明しているとおり、ドラムに1本のギターあるいは1本のベースだけ、という組み合わせであろうと、充分にヘヴィなサウンドを成立させることは可能なのだった。そして、同様の毛並みを、このノルウェーはオスロ出身のディオ、HYMNも持っている。少なくともファースト・フル・アルバムである『PERISH』においては、ギターとドラムのコンビネーションを通じ、ドゥームやスラッジの流れを汲んできたヘヴィなサウンドが成立させられているのだ。鈍重のリズムによってもたらされるドス黒いアトモスフィアとグルーヴのうねりに絶叫じみたヴォーカルが噛み合う。スタジオ音源である以上、実際にベースが入っていないのか断言できないものの、低音の主張は申し分ないし、トリオの編成とはまた異なったフレキシビリティが、インプロヴィゼーションにも似たスリルをダイナミズムのなかに引き込んでいる。いや、もちろん、方法論としては既に真新しくはない。が、厳選されたブレンドのような確かさがスタイルそのものの強度へと転化させられているのである。密室的な息苦しさや呪術的なまどろみよりもパワフルやエネルギッシュと喩えられる部分の大きなバンドかもしれない。3曲目の「SERPENT」で、細かく刻まれるギターのリフは、TOOLやNEUROSISのアプローチを彷彿させながら、ダイレクトであるほど研ぎ澄まされたカタルシスに結びついていく。

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2017年03月26日
 Bonehead

 括るとするなら、ヴィンテージなハード・ロックに近いというニュアンスでのストーナーになるだろうね。フィンランド出身のトリオ、RUCKWATERのEP『BONEHEAD』で聴かれるサウンドは、である。1曲目の「ONCE MORE WITH FEELING」など、縦ノリと修辞できるようなリズムとギターのリフとでぐいぐい押してくるナンバーには、アメリカのKYUSSやFU MANCHU、イギリスのORANGE GOBLIN、スウェーデンで活動しているスパイス(元SPIRITUAL BEGGARS)のキャリア、THE MUSHROOM RIVER BANDやBAND OF SPICEを引き合いに出せるものがある。が、しかし、それらに比べ、パンキッシュと見なせる疾走感がバンドの印象に強く付加してもいる。ワンツーワンツースリーフォーのカウントで幕を開ける4曲目の「SUPER FRUSTRATION」における勢いは、まるでガレージ・ロックかハードコアじゃないか。他方、6曲目の「FLAME DOESN'T CAST A SHADOW」では、まさかシューゲイザーからの影響でもあるのかよ。後期のRIDEを思わせるアーシーなアプローチと初期のRIDEを思わせる轟音のアプローチとが奇妙な同居を果たしており、その意外な展開に少しぎょっとさせられる。全6曲の内容からうかがえるのは、ああしたい、こうしたい、の衝動を自然体で出したことによる一種の多様性であろう。それがラフでありながらもタフにまとまったフォームを生み出しているのだ。もちろん、まとまりがあるのは、EPのサイズだからなのかもしれない。調べるかぎり、これまで数枚のEPをリリースしているが、フル・アルバムは存在しないみたいで、これがフル・アルバムのサイズになると、どうくるか。ライヴも良さそうだし、気になっている。

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2017年01月05日
 Apex III

 年間ベストの類は単純に面倒がくさいから選んだりはしないのだけれど、フランスはボルドー出身のトリオ、MARS RED SKYのサード・アルバム『APEX III (PRAISE FOR THE BURNING SOUL) 』は、2016年によく聴いたものの一つである。実は『APEX III (PRAISE FOR THE BURNING SOUL) 』から遡って過去の音源も手に入れたのだが、ドゥーム・メタルのジャンルに分類されうるスローでヘヴィ、長尺の演奏を軸にしながら、シド・バレットやTHE BEATLESにも通じるようなポップさ、サイケデリックな要素の強く出ているところに、サウンドのおもしろさがあると思う。その音楽性は作品を追うごとに洗練されていき、『APEX III (PRAISE FOR THE BURNING SOUL) 』では、ひずんだ低音が特徴的である以上に、とろけそうなヴォーカルのメロディが一層魅力的になっているのであった。演奏のスタイルは異なれど、ベースが大きな役割を果たし、そこにポップであり、サイケデリックでもあるフィーリングが乗ってくるあたり、レス・クレイプールとショーン・レノンのTHE CLAYPOOL LENNON DELIRIUMを同じ棚に並べることも可能であろう。

 場合によったら、アメリカのDEAD MEADOWを引き合いに出せるかもしれないが、あそこまで籠もった音質でなければ、よりメロディアスな方向に開かれている。無論、エフェクターのたっぷりと効いた低音のうねり、ずっしりとしたリズムの重みを抜きにしては語れない。濃厚なグルーヴに足を取られ、あやしいその魔力にずぶずぶと引きずり込まれてしまうのである。『APEX III (PRAISE FOR THE BURNING SOUL) 』について述べていきたい。ヘヴィな演奏とは距離を置きつつ、同一のフレーズを繰り返すことで神秘的なムードを醸し出した1曲目の「(ALIEN GROUNDS)」からシームレスでタイトル・トラックとなる2曲目の「APEX 3」に突入し、サウンドがぐにゃりとゆがんだ瞬間(それは決して派手な展開ではないのに)異様な盛り上がりがある。低音を寄せては返す波のように持続させるベースの果たしている役割は大きい。そして、コーラスに差しかかり、いななくギター、とろけそうなヴォーカルのメロディ、これらを束ねる構成の見事さがMARS RED SKYならではの独特なイメージを織り上げているのだ。緊張感に溢れ、重たく軋んでいるのに、甘い。甘美というよりほかない。不可思議な陶酔に満たされる。

 ふおお。終盤のパートでドラムの連打にキャッチーなコーラスを重ねた3曲目の「THE WHINERY」が最高に好きである。6曲目の「FRIENDLY FIRE」におけるヴォーカルのメロディ、ギターとベースのコンビネーションには平伏させられる。ボーナス・トラックにあたる8曲目の「SHOT IN PROVIDENCE」までを含め、個々の楽曲の完成度は、非常に高い。さらには個々の楽曲からアルバムの全体像が、あるいはアルバムの全体像から個々の楽曲が設計されていったかのような統一性があり、スペーシーでいて、ドリーミーでいて、ポップ・ソングを思わせる一面を持ちながら、アシッドなロックのダイナミクスが漏れなく宿らされているのであった。ヘヴィという観点に絞るなら、ファースト・アルバムの『MARS RED SKY』(2011年)やセカンド・アルバムの『STRANDED IN ARCADIA』(2014年)にあった激しさが『APEX III (PRAISE FOR THE BURNING SOUL) 』には乏しいかもしれない。だが、洗練を経、マニアックなレベルにとどまらないアプローチとスケールとを手に入れていることは明白だ。

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