ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年11月29日
 王国 (その3)

 帯には「長編最大のクライマックス」とあるので、これはここで終わるのかな、と思う。しかしどこかで、よしもとばななのライフワーク、みたいな文句を見かけた気もするので、まだ続くのだろうか、とも疑う。個人的には、はやく終わって欲しい、という感じしかしない。もしかすると、主人公が子供を産む(宿す)までを射程に入れている、そういう可能性も読み取れる。ところで、恋愛とはいったい何だろう。よしもとの小説に出てくる登場人物たちはみな、それなりにモテるので、そういったことを真剣に考えるふりだけして、結局は、自分の思いなしにより、恋愛感情を測る、決定する。そこには弁証がなく、だから、読み手の全能感と指向性みたいなものを充足させるのではないかな。しじつ、よしもとの小説において、主人公は、執拗なほどに他人をカテゴライズする、敵だ、味方だ、狂っているだ、正常だと区別する。それはときに横暴であるほどだ。その傲慢さに関しては、かつて栗原裕一郎が指摘している。そういった人間の良くない部分が、他のものを否定することによって、逆に肯定の体に収まってしまうという、ひじょうに歪な姿形をとっているのが、この『王国』というシリーズなのであり、僕には、それがちょっと頂けない、痛ましく感じられるのであった。どうして、吉本ばななは、よしもとばななになってから、かつての繊細さを失ってしまったのだろう。もしかすると、そのことは、『重層的な非決定へ』などで吉本隆明の説いた大衆の像が、現代に至っては、以前と違ったものへ変容してしまったこととパラレルな問題なのかもしれない。そのへんは、いつかちゃんと論じてみたい気がする。

・よしもとばななその他の作品についての文章
 『なんくるない』について→こちら
 『High and dry(はつ恋)』について→こちら
 『海のふた』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | 読書。
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