ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年11月28日
 『すばる』12月号掲載の短編。これ、いい、すごく、いい。たぶん生田紗代という作家の価値は、これを書いたことにあるとさえ、言いたくなった。もちろん、その評価が、好みの問題なんだとすれば、まさしく僕の好みであるということだ。文中から引く。〈初めて会った男の子と、初めて来た街で、私はもう滅多に思い出すことのない友達の記憶を思い出している。ここ何年かはお墓参りにも行っていない、半分忘れかけた友達の。でもここは何もかもが見知らぬ場所で、その記憶が、私の知っているただ一つのことだった〉。これが、この小説の焦点であるといってもいいだろう。あるいは始点で、終点ではない。そこがポイントだ。日常のなかで人が亡くなる表現を、読み手である僕が嫌うのは、そのことによって発生した物語や感傷に、すべての記述が依存してゆくからなのであるが、ここではそれは、半分ほどそのような状態になったところで、いやそれは違うだろう、それはつまり嘘を書くことなんじゃないか、という否定のほうへ体勢を立て直そうとしている、言い換えれば、できうる限り真実でありたいと願う、そんな祈りであるような感じがする。人が死ぬのは悲しい、それは事実であるが、しかし、人が死ぬことで成り立つドラマを、こうして人が必要とすることもまた事実なのであり、それはそれですごく悲しい生き方だ、そのような悲しさの部分を、極大化するでもなく、かといって矮小化するのでもなくて、ただただ「なすがままに」の姿形で受け止めている。そうして、ようやく気づくのだろう。生者は何者でもなく、死者も何者でもなく、生者から見た死者こそが、他者として固有性を与えられる、しかしその死者が、生者である〈私〉を見てくれることはない、とすると、生きている〈私〉は、もしもひとりぼっちであるのならば、やはり何者でもなかった。

・生田紗代その他の作品についての文章
 「まぼろし」について→こちら
 「タイムカプセル」について→こちら
 「十八階ヴィジョン」について→こちら
 「ぬかるみに注意」について→こちら
posted by もりた | Comment(2) | TrackBack(0) | 読書。
この記事へのコメント
生田紗代さん頑張ってますね〜。
僕も生田さん好きですよ。
読んだのは「オアシス」「タイムカプセル」
だけですが。
群像に掲載されていた短編を読みましたが
なんていうタイとるだったっけな?
文藝賞出身の作家さんはたくさんいるけど、
地道に頑張ってる生田さんや中村航さんには
頑張って欲しいです。
Posted by マコト at 2005年11月28日 23:51
マコトさん、どうもです。
生田紗代はコンスタンスに作品を出し続け、そのたびに良くなってる気がします。
このままがんばれば、けっこうなものになるんじゃないか、と、大幅に期待を寄せています。
デビュー後の成長が著しいという意味で、のちのち角田光代のようになるのではないか、と。
Posted by もりた at 2005年11月29日 14:39
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