ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年05月24日
 異性に苦手意識があるとき、または自分の気持ちが報われないようなとき、女の子にしてみれば、男なんて、ということになるのだろうし、男の子にしてみれば、女なんて、ということになるのだろう。こういう呟きは、たぶん、いつの時代にあっても変わらず、ある。ななじ眺の『コイバナ! 恋せよ花火』の2巻では、それまで男の子の良さがさっぱりわからず、恋になんかまったく興味のなかったヒロイン、丸井花火が、高校に入って知り合い、最初は嫌な奴だと思っていたはずのイケメンさん、宇野誓のことを、もしかしたら好きになっているのかもしれない、と自覚する様子が描かれている。だが、初心な花火にとって、その、イレギュラーな心の動きは、ただただ混乱を招く一方でしかなかった。そうした内面の混乱を、どたばたとしたコメディに移し替えるさいの手つきに、この作者の良さがとてもよく出ていると思われ、1巻にもましておもしろい内容になっていると感じられる。新規で登場する女講師、AMI姫もじつにユニークな人物である。〈自称28歳 実年齢45歳〉と自分でいってしまうところが、本当か嘘かは知らないけれども、すげえインパクトがある。それから佐々くんが、やっぱり、いいよね。やさしくて、気が利く、こういう男子はもててしかるべきであろう。色気より食い気な元気いっぱいのぽっちゃりさん、厚美が顔を赤らめるのも、わかるわかる。さらに、花火の友人である美衣の思わせぶりな行動が、まあ、おそらくは彼女が同性愛者あるいは性同一性障害という設定の伏線なのでしょうが、ワキの部分を賑やかにしている。しかしながら、と、注意しておかなければならないのは、あくまでも花火の恋が物語のメインだということであり、そして前途は多難だということにほかならない。ヒロインの好きになった男性にはすでに彼女がいる、ばかりか、その彼女はルックスも性格も良い、このような前提を置いてしまった少女向けのラヴ・ストーリーは、たいてい、先に進むにつれ、失敗する。なぜなら、恋愛対象である男性が今付き合っている彼女と別れ、ヒロインを好きになる、もしくはヒロインを好きになったので、今付き合っている彼女と別れる、いやまあ手続きはどうであれ、なぜヒロインを選んだのか、といったポイントに対し、つよい説得力を与えることができなかったりするためだ。ある程度、大人向けであれば、なんとなくであったり、場のムードやノリであったりしても、そういうことってあるよね、と解釈されるが、恋愛がイノセントな感情の結果だと信じられているような表現にあっては、身近にいたほうが勝ち、(じっさいに性交するわけでなくとも)寝取ったら勝ち、の美学は、そもそものテーマを壊しかねない。はからずも2巻には、誓の恋人とたまたま挨拶する機会のあった花火による〈別に 望まないし 望めないし 勝ちとか 負けとか 考えもしなかったけど 完敗な私は 宇野誓の目にどう映っているのだろう〉というモノローグがあるけれど、じっさい、誓が心変わりをすることがあるとしたら、相応の必然を、作者は、今後の展開に用意しなければならないのである。それこそ心変わりの理由にルックスや性格以上のサムシングを。この難問をどうクリアーするか。正直なところ、序盤はすごく楽しかったのに後半がかなり残念になってしまった前作『パフェちっく!』を思い出してしまえば、どうしても不安を覚えざるをえないのだった。

 1巻について→こちら

 『パフェちっく!』
  22巻について→こちら
  19巻について→こちら
  14巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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