ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年05月08日
 帯に中島美嘉のレコメンドが付いているのは、感覚的に、ものすごく合っているようでもあり、ものすごく合っているから微妙なようでもあり、まあ『WORST』というマンガの迷走ぶりをよく表してはいるか。いま、迷走と述べたが、もしかしたら、作者の高橋ヒロシ自身、そして大勢のファンにしても、そんなことは微塵も感じていないかもしれない、結局、そのへんが最大の問題なんだよな、と思う。まず率直にいってしまえば、ここ数巻は、おどろくぐらい見るところがなかった。主要人物たちによるケンカ、というかタイマンに次ぐタイマンのシーンが繰り広げられ、それぞれの見せ場を持たされた展開は、本来ならば、こう、読んでいるうちに血が滾って仕方がなかったものだろう。しかしながら、いまいちいけていなかった。とくに九里虎と善明の決闘に顕著であったような、大ゴマを使い、極力セリフを排し、登場人物たちのアクションを軸に作中の時間を描こうとする構成は、おそらく、高橋がフェイヴァリットにしている井上雄彦の、『SLAM DUNK』の山王戦を意識したものだと推測できるのだが、いかんせん『SLAM DUNK』の場合とは違い、事前の物語で積み重ねてくるべきであったテーマの中心となる点を欠いた状況で行われているため、さあここからがクライマックスですよ、といったインフォメーション以上の効果をあげていなかったとさえいえる。薄っぺらい迫力しかなかったのは、あくまでもそれが表層的なものにすぎなかったからで、もちろん、ケンカ熱い、不良かっこういい、のスペクタクルのみをやりたかったのであれば、何ら問題はない。だが、現代ヤンキー・マンガのイディオムにおおきく関わってきたマンガ家の振る舞いが、それではまずかろう。いや、個人的には、これまでにも何度か書いたことだけれども、『QP』で扱った我妻涼の救われないアウトサイダーぶりが若い読み手にカリスマとして受け取られていることへの残念を、かつて高橋がいっていたのを信じているので、こういうふうな不服を示してしまう。要するに、我妻涼に象徴された不良の孤独をいかに克服するか、あるいはその悪影響をどう払拭するか、それらのことを『WORST』には期待しているのである。さて。率いていた軍団の主だった戦力が倒されてしまい、完全に孤立した天地寿が、いよいよ月島花との最終決戦に召喚される、というのが、この20巻の流れであり、天地の非情な性格が自殺した実父に由来するものだとの事実関係が、こちら読み手に明かされている。このことによって、仲間を必要としない天地と仲間を大事にする花の対照が、より鮮明となっているのだが、しかしなあ、天地の暗さはともかく、花のあかるさに魅力不足というか、周辺からどれだけ慕われているのかはわかるし、そういう慕われ方をもって彼の人柄をアピールしたい目論みなのもわかる、けれども、なぜ慕われているのかだけがあまりよくわからず、天然的に無邪気であるふうにしか見られないのが、つらい。天地との直接対決に入る前に、せめて花の性格を掘り下げ、存在感をつよめるエピソードを、あと一つか二つ、入れて欲しかった。

 17巻について→こちら
 11巻について→こちら

・その他高橋ヒロシ関連の文章
 『鈴蘭男子高校入学案内』について→こちら
 『クローズイラストBOOK』Vol.1について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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