ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年04月13日
 いま現在、ファンタジックな世界を舞台にした少年マンガとしては、異端であると同時に正統でしかありえないという意味で、もしかすると冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』と双璧を為しているのではないか。と、さすがにそりゃあ言い過ぎだろ、って声が聞こえてきそうだが、しかし個人的には、それぐらい所十三の『白亜紀恐竜奇譚竜の国のユタ』のことは高く買っているのであって、まあ、たしかに絵柄や構成のスタイルはやや古めかしくもあり、そのせいでマイルドに見られてしまうかもしれない点は多いけれど、残酷な描写をナチュラルに織り交ぜながら、それでいて健全な雰囲気をキープしているあたり、当世のポリティカル・コレクトな少年マンガがしれっとしているところを、真っ正面から引き受けているかのようですらあり、たいへん心強く感じられる。さて。平原王国に囚われの身となったユタが、海王国に荷担している雷龍党を討伐するための出征に乗じ、彼を助けに来た仲間たちと合流、ようやく山王国へ戻れることになる、というのが、この8巻における大まかな流れなのだが、ここでの見所は、やはり、ユタ、フリード、そしてパウルスの、同じ矮人(ナノス)でありながら、それぞれタイプも違い、持っている目的も異なる三者が、“この世に在る可から不る者たち”の襲撃を受けて、はからずも共闘関係を結ぶこととなるくだりであろう。これはちょうど、冥王の復活によって、作中世界が〈人と人が争っている場合ではない〉事態に突入したことのミニマムな再現になっており、その展開のなかで、文字どおり、人と恐竜の命運を握る「鍵」であるユタの、類い希なる資質が発揮される。そしてそれはなにも、恐竜たちと会話ができるといった先天的に特殊な能力だけの話にかぎらない。自らを危険にさらしても他人に手を差し伸べるような、気持ちの有り様も含めてのことである。そこに少年マンガというジャンルの根っこにあたる部分がきっちりと示されている。大状況と小状況をまたぎ、あれだけばらけていた伏線が、ユタの帰郷とともに一本化されている、そのへんの持っていき方にも感心させられる。いちおう『白亜紀恐竜奇譚竜の国のユタ』の題では、この巻がラストとなり、すでに『週刊少年チャンピオン』誌では、『D-ZOIC』とタイトルを改められた続編というか第2部がスタートしているが、全8巻、すこし残された含みはあるけれども、これはこれで一個の少年の冒険譚であり成長譚として立派にまとまっている。

 7巻について→こちら
 5巻について→こちら
 4巻について→こちら
 1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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