ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年03月30日
 蒼太の包丁 17 (17) (マンサンコミックス)

 料理マンガというスタイルは、連載が長期化すると、作者の蘊蓄やイデオロギーをアピールする、だけ、の道具になりがちなところがあって、なかにはストーリー上のマンネリズムを避けるかのように、対決形式というかバトル的な展開を設けるものもすくなくはないけれど、それだって結局は、作者の蘊蓄に耳を傾けさせるか、作者のイデオロギーを優位に見せかける、そういうため、だけ、の趣向になりかねない。もちろん、若年層向きの料理マンガにおける、美味い不味い、をどうやってリアクションに還元するか、の単純なカタルシスに関しては、このかぎりではないとしても、その手の作品はたいてい、話がおもしろくない、というのが常である。『蒼太の包丁』はしかし、そのような料理マンガの悪しき慣例を免れつつ、あくまでも物語のレベルで愉しませてくれる、数少ない作品のひとつだといえる。すくなくとも、現時点で17巻のけっこうなヴォリュームに達しても、その内容が残念なかたちに歪んできているぞ、と眉をひそめたくならない。たとえワキでさまざまなイベントが発生しようとも、主人公である青年、蒼太が料理人として(または料理と人を通じて)いかに成長するか、この中心の一点を忘れることなく、ぶれず、効果的に描き続けている。基本的には人情に頼る作風であり、絵柄も含め、ややウェルメイドな印象を受けるし、話題性のすくないマンガではあるけれど、もうすこし高く評価されても良いのではないか、と、しばしば思う。さて、この巻では、蒼太にとってクリティカルな事件が、二つ、平行して起きる。そのあいだで、まさに身を引き裂かれるような決断を迫られる。それが正念場であるならば、おそらくは〈板場に立てる喜びを忘れるなよ! たとえ何があろうともな!〉という父親の言葉が、今後の展開を占うほどに、重要な意味を持ってくるに違いなく、ああ、こりゃあ次の巻では泣かされるかな。

 16巻について→こちら
 15巻について→こちら
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 6巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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