
原題「BEST OF BOX」というサブ・タイトルが、なぜか邦盤では「ベスト・オブ・ニルヴァーナ+3」にすり替えられているというインチキの『スリヴァー』は、要するに、昨年発表された未発表テイク満載ボックス・セットのダイジェスト版なのであるが、ぶっちゃけて、全22曲のうち、4曲目「フロイド・ザ・バーバー(ライヴ)」7曲目「ブランデスト(スタジオ・セッション)」8曲目「エイント・イット・ア・シェイム(スタジオ・デモ)」15曲目「オールド・エイジ(ネヴァーマインド・アウトテイク)」16曲目「オー・ザ・ギルト」18曲目「レイプ・ミー(バンド・デモ)」19曲目「ハート・シェイプト・ボックス(バンド・デモ)」の7曲以外は、心的にではなくて、音響的に聴くのがかなりつらい、ほんとうに試作のレベルを逸していないので、あくまでも熱心なファンが嗜好品として味わうか、資料価値以上の意味合いを持ちえていないのであった。でもって、そういう人たちというのは、すでにボックス・セットを購入してしまっているのではないか、と思えば、?な代物であったりもする。いちおう、カート・コバーンがニルヴァーナ以前にデイル・クローヴァー(メルヴィンズ)と録音した1曲目「スパンク・スルー(1985フィール・マター・デモ)」と、オムニバス『ノー・オルタナティヴ』で初出となったナンバーの別ヴァージョンである9曲目「サッピー(1990スタジオ・デモ)」、『ネヴァーマインド』以前に当時まだプロデューサー候補にしか過ぎなかったブッチ・ヴィッグへ送ったテスト・テイクらしい「カム・アズ・ユー・アー(ブーム・ボックス・ヴァージョン)」が、今回初登場というわけで注目ではあるのだが、「サッピー」以外は、やはりカート・コバーンというキャラクターや物語が前提としてあって、はじめて聴取可能なものだろう。いや、しかし僕は、その「サッピー」と、あと「オー・ザ・ギルト」が、やっぱり大好きである。好き過ぎる。矛盾するようだが、その2曲を今まで聴いたことがないなら、それだけでも充分買いですよ、と言いたくなってしまう。後者はもともとジーザス・リザードとのスプリット・シングルに収められたもので、『ブリーチ』時代を想起させるロウ・ファイでアグレッシヴな仕様だ、アンチ閉塞感な叫び声が聴こえる、かっこういい。そして「サッピー」である。一時期これがあの「ヴァース・コーラス・ヴァース」という楽曲なのではないか、と噂されただけあって、まさにグランジィなセオリーに則った躁鬱の協奏となっている。刺々しいフィーリングのなか、抽象的な歌詞が、印象的なフレーズとしてうたわれる様が、じつに良い。ただし出来映えとしては『ノー・オルタナティヴ』に収められたもののほうが上だと思う。
・ニルヴァーナ関連の文章
DVD『クラシック・アルバムズ:ネヴァーマインド』について→こちら
ボックス・セット『With the Lights Out』について→こちら
DVD『NIRVANA A ROCK PORTRAIT DOCUMENT』について→こちら
DVD『HIPE!』について→こちら
それと「はてなダイアリー」にもニルヴァーナについての文章置いてます→こちら
