ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年03月14日
 近キョリ恋愛 1 (1) (KCデラックス)

 要するにトレンドなのだろうが、「ツンデレ」という今どきの言葉で形容されるサブ・カルチャー的な女性像を、少女マンガのジャンルが、意識的に、採用するケースだって増えつつあるわけだけれど、この、みきもと凜の『近キョリ恋愛』も、作中で〈枢木ゆに 16歳 性格はツンデレガール〉と説明されているとおりのヒロインと、表向きはペラいが性根はしっかりしているイケメン教師との、シチュエーション上、難儀なラヴ・ストーリーとなっていて、まあ、そういったキャッチーな観点はともかく、彼女の資質は、結局のところ、純粋さと鈍感さと不器用さの裏返しであり、そのことによって、相思相愛でありながらも、ディスコミュニケーションの災いに巻き込まれてしまう様子を、とてもコミカルに描いているあたりに、本質的な魅力がある。とてもファニーで、すごくすごくキュートなマンガになっている。ずば抜けて頭が良く、運動神経にも恵まれた優等生のゆにに、ひとつ欠点があるとすれば、それは真面目すぎるあまり、周囲からは無表情ないし無愛想に見られてしまうことであった。その彼女からしたら、臨時で担任をつとめる若い男性教師、櫻井ハルカは、ルックスの非凡さは認めるけれど、とにかくチャラい態度が不愉快きわまりない対象でしかない、いや不愉快きわまりない対象でしかないはずだった、自分の感情が恋であると気づくまでは。と、そうした物語における最大の困難は、先ほども述べたように、生徒と教師という立場の違いに発生している。ゆにの支離滅裂な告白(だろうね)を経て、早くも1話目(§1)の段階で、二人は付き合いはじめることになるのだが、その関係はもちろん、秘密裏に結ばれていなければならない。こういった事情と、ゆにの性格が相まって、ドラマは横滑りし、横滑りしては、まっすぐな恋愛のシーンに立ち返る、好きだという気持ちを、毎回のエピソードごとに繰り返し繰り返し、再現する、繰り返し再現することで、ユニークでピュアラブルな状態が、新鮮なまま、キープされている。ありふれた設定がじつによく生かされ、ありふれていないレベルにまで作品を持っていっている。これまで、この作者は、オリジナルのストーリーよりも原作付きのもののほうで、手腕のすぐれているところを見せる機会が多かったが、それというのはおそらく、オリジナルの場合、自身の描きたいことと実際に描かなければならないことの距離が接近しすぎ、作中の対象に対する批評性がコントロールしきれなかったせいだと思われる。しかし、ここでは、成長著しい目線のたしかさで、一個の世界が作りあげられている。いよいよブレイクを予感させる内容の1巻である。

 『17歳』について→こちら 
 『水曜日のライオン』について→こちら
 『タイヨウのうた』(原案・板東賢治)について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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