ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年02月22日
 仁義S 6 (6) (ヤングチャンピオンコミックス)

 『DEATH NOTE』とそのフォロワー群を凌ぐスリルとサスペンス、そしてシリアスな問題提起、それが立原あゆみの『JINGI(仁義)』シリーズである。いやいや、まじでまじで。冗談抜きで。ぶっちゃけた話、『仁義S (じんぎたち)』に至っては、背景は資料のトレースのようであるし、人物はべつのコマのコピーで、エピソードは過去作のリサイクルにしか見えない、にもかかわらず、テーマにかかる部分は更新され続け、破綻と呼べる箇所が次々と伏線となっては生き、まったく先の読めない展開が繰り広げられるから、じつにエンターテインさせられる。さて。立原のヤクザ・マンガに共通する最大のテーマは、すべてのヤクザの夢はヤクザをやめることでなければならない、すなわちすべてのヤクザがいなくなるのを夢見ることだといえる。無印『JINGI(仁義)』の終盤、某国の国家予算と同等の資金を自由に使えることができ、もはや敵なし状態になった仁と義郎のコンビが、自分たちでトップには立たず、関東一円会の会長の座を譲ったのは、そうしたヤクザの夢を叶えるのにもっとも近しい人間は柳澤だと判断したためであった。しかしなぜ、どうして柳澤は大恩ある仁と義郎を裏切ろうとするのか。〈真正直なやつがオレたちを排除したがっている……つまりオレらが心底悪ってわけか〉。こういった疑惑を中心の点とし、『仁義S』6巻の物語は動く。仁と義郎の命により、柳澤の組織にダメージを与えるべく、潜入行動を起こすアキラと大内の、その正体をじつは柳澤は見抜いていた。そうでありながらも、彼らの計画を見逃す。ここで謎めくのは柳澤の真意にほかならない。仁と義郎はいちおう、西をまとめる極地天道会の傘下に、力を持ったまま一円会を入れることだと当たりをつけている。組織の絶対数が減れば、それだけ争いも減る。義郎の言葉を借りれば、なるほど〈柳澤の考えそうな事だね〉というわけである。しかしねえ、物事の道理というのは、そう簡単に出来ていないのだよ。〈天道会にシッポふりゃ 風組との戦争になるぜ 天道会は最後の敵 風組を喰う気になる〉と仁が言うように、だ。ここで、すこしメタ・レベルに立った解説にならざるをえないのだけれど、同一の世界観をシェアする立原作品において、風組と天道会が直接対決をするということは、つまり『本気!サンダーナ』のなかで本気がつくった一時の平和の和を壊すことになりかねない。また、一円会が天道会につくとなれば、日本極道のパワー・バランスが完全に崩れる。そうなってしまえば、世界観をシェアしているため、現在同時進行中の『極道の食卓』や『恋愛(いたずら)』にも十分影響を与えるし、風組総長を含む『本気!』シリーズはもちろん、すでに完結した『あばよ白書』や『東京』、『弱虫(よわむし)』の登場人物たちをも巻き込まざるをえない。ある意味、立原ワールドのハルマゲドンとでもすべき事態が到来する。是非とも読んでみたいところだが、おそらく、作者の意図はそれを回避することだと思われる。できれば一円会内部の抗争で収めたい。そこで仁と義郎はどう動くか。そして〈義郎 おめえのいうJINGIS(じんぎたち)が育ってきた〉と評されるアキラと大内がどういった役を担っていくのか。ふと義郎が〈平和が一番という事なのだろうね だとしたら何の為のヤクザだろうね 生き死にがすぐ側になければつまらない〉と呟くのも気にかかる。極左のテロリストから転向してきた彼にしたら、すべてのヤクザの夢はヤクザをやめることでなければならない、というのは、あくまでも根っからのヤクザ者である仁の、個人的な理想でしかないのかもしれない。何を企んでいるんだか。あいかわらず、そのゲームを完全に支配しているかのような底の見えないクールさが、作品の層を何重にも厚くしている。

 5巻について→こちら
 4巻について→こちら 
 3巻について→こちら
 
・その他立原あゆみに関する文章
 『本気![文庫版]』第1巻・第2巻について→こちら
 『恋愛』1巻について→こちら
 『極道の食卓』
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『ポリ公』2巻について→こちら
 『月の教室』について→こちら
 『喰人』1巻について→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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