ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年02月18日
 楽園のトリル 3 (3) (プリンセスコミックス)

 すべての問題には必ずや何かしらかの原因が秘められている、とすれば、律の苦労性と音楽を忌避する心性の奥底には、幼い頃に受けたダメージの存在があった。藤田麻貴の『楽園のトリル』3巻では、それがいかなるものであるかが明かされ、いやいや、そういう理由がございましたか、となるのは、思ったよりもずっと複雑な家庭の事情が隠されていたためである。このへんはけっこうシリアスでヘヴィな部分もあるのだが、表向きは犬猿の仲であるような篁のフォローによって、深刻さは、あたらしい扉を開く鍵となり、律の負担を、ほんのすこし軽減する。たしかに〈トラウマ持ちの自分に酔ってんだな〉と言い、〈アンタは負け続けてるんだよ この中のモンにな〉と言う、言葉自体はきついけれども、そうした態度の裏側に隠されている気遣いが、やがて律に〈バカだアホだ罵りながら あたしの過去調べたり 引き換えに たぶん このヒトにとってものスゴイ大きな秘密しゃべったり 何ひとつ自分の得にならないことばっかりで――〉と伝わる。篁が弾くピアノの前で、歌えず出なかった声が、出るように歌えるようになる。なるほど、こうやって二人の距離は、だんだん近づいてゆくわけだ。が、フィクションにおける恋愛は、法則的に障害を必要とし、召還するものなので、あらたな厄介ごとが持ち込まれるのであった。律が異性と寮の同室をシェアしていることを知った義弟の大は、じつは律を恋愛対象として想っていることもあって、猛烈に篁を敵対視する。お約束といえばお約束といえるパターンであるし、正直なところ悶着の中心にいる律の主体性が乏しすぎやしないか、という気もするのだけれど、ちゃっちゃっと物語を先に進めるテンポの良さが、それを気にさせない。

 1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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