ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年01月31日
 恋したがりのブルー 1 (1) (フラワーコミックス)

 1巻の時点で佳作になることが約束された作品などと評すると、いかにも過言であるかのように思われてしまうかもしれないが、しかし、藤原よしこの『恋したがりのブルー』の1巻は、今後に展開されてゆくであろうラヴ・ストーリーからまさしく目が離せなくなるほど、すばらしく良く出来たイントロダクションになっている。なぜそう感じられるのかといえば、恋愛状態における三角関係以上の関係性によってもたらされるアポリアが、とても的確に描き出されているからである。なにも難しいことが行われているわけではない。スモール・サークルの内で生じる三角関係以上の関係性においては、愛情と友情とが背反し合う、たったそれだけの要所をしっかりと押さえることで、物語それ自体の魅力的な導入がつくられているのだ。これをやれている恋愛のマンガは意外とすくない。よくもわからず、とりあえず三角関係にしておけばお話は動くだろう式に発進させられたラヴ・ストーリーのほとんどが、やがてぐだぐだになってしまうのは、結局のところ、そのためというほかない。作中人物たちがどのような価値観で動いているのか、じつは作者自身が理解していないのではないか、と勘ぐりたくもなる凡百の作品群と比べ、『恋したがりのブルー』は、前記した一点、ただその一点の違いでもって、あきらかにワン・クラス上の内容を持つに至っている。高校の入学式が行われる朝、偶然に知り合った陸という同級生からいきなり〈なんにもしねえから チューとかHとか絶対しねえから フリだけでいいんだ ウソの彼女になってくれればいんだ〉と頼まれた蒼は、もちろん当然のごとくその申し出を断るのであったが、じつは陸が自分の恋心を秘してまで、彼の幼馴染みである海との友情を守ろうとし、そんなことを言い出したのを知って、思わず嘘の恋人の役を引き受けてしまう。かつて陸と海のあいだに何があったのか。〈仮に 仮にだよ? 違うけど もしオレが海の彼女を好きだったとしてもサ――せっかくうまくいってるものをサ――別れるか? フツー いくらオレが小4ん時からのつきあいのダチだからってサ――あのバカ ヨリ戻せ――ってゆったら殴りやんの〉というわけである。そして、この海の彼女とされるのが、蒼が高校にあがってはじめてできた友だち、清乃であったことから、どうやら厄介な問題が起こっていきそうな気配を、こちら読み手にうかがわせる。嘘から出た実、という諺があるけれど、蒼と陸の虚偽であるような間柄が次第に本物らしく、つまり軽くあったものがじょじょに重たくなってゆく一方、陸と海そして清乃と蒼の四者の立場は、それぞれがお互いを慮るあまり、あたかも本心の隠された状況になっている、要するに、そこにも嘘が、嘘からやってきている重たさがある。これらの重みが、作品を両脇から支えるふうにして安定させているとともに、まるで綱引きし合うみたいな緊張をドラマのなかに呼び込んでいる。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
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