
米ロス・アンジェルスをホームとする4人組THE MAE SHI(ザ・メイ・シー)のニュー・アルバム『HLLYH(ハレルヤ)』なのだが、これがさあ、以前までとだいぶ身振り手振りの違う作品であるから、たいそう驚く。ぎゃんぎゃんうるさい騒音は抑え気味に、大味なポップさ加減がずいぶんと増した。2分を出ないナンバーは、ボーナス・トラックを入れ、たったの3曲で、1分未満のナンバーは見当たらなくなった。一個一個の楽曲にたしかな手応えが生まれ、かなりとっつきやすくなった印象である。日本盤ライナー・ノーツの羽鳥麻美によると、06年にヴォーカルを含むメンバー・チェンジがあったようで、そうしたことの影響も多少あるのかもしれない。とはいえ、このバンドらしい、はっちゃけたトリッキーなセンスはそこかしこに健在であり、確信犯的にふざけたアプローチも損なわれていない。あえてチープな電子音が、やたら大げさなメロディと絡む、このへんのファニーさが親しげに手招きする一方、ドラムの拍子はせわしく、ときに乱暴で、うずうずとするような興奮を煽る。ぜんぶをぶち壊しにしかねない、そういう破れかぶれな触感は後退したけれども、あいかわらずのテンションが連れてくるエネルギーは、めまぐるしくもあるし、ダンサブルでもある、下品なほどにえげつないノリをつくり出す。
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