ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年10月11日
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 綿矢りさ「You can keep it.」は、「インストール」文庫版に収められた、書き下ろしの短編小説である。短いというのもあって、内容を取り出すのは難しいが、ここでは、綿矢の作品としてははじめてのものだろう、男性の自意識を中心にして、物語が動いている。とはいえ、その人物は、じつにこの作者らしい、女の子の意地の悪い視線によって、いったん洗い直された上で、形作られている。そうして、こちら読み手の眼をとおして、クリアに見える惨めな気配は、『蹴りたい背中』におけるハツが抱え込んでいたものと、同型であるように思える。いや、しかし、この「You can keep it.」もそうなのだが、なぜ綿矢りさの小説を読むと、恥ずかしい感じがこみ上げてくるのだろう。それはたぶん、自分では深い思慮であるつもりの短絡的な思考を、明け透けに素っ気なく「短絡的ですよ」と断じられる、突き放されたような、そういう侘びしい気分になるからなのかもしれない。そして、その点が、自意識を過剰に包装した作品を提供し続ける同世代の作家たちと、綿矢とを隔てるものであるに違いなかった。


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | 読書。
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You can keep it.  綿矢りさ
Excerpt:  文庫版『インストール』のおまけ。姫のペンネームは本名ではないらしい。それでワタヤから思い浮かぶのはどうしても村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』に出てくる綿谷ノボルまたはワタヤノボルになってしまう。彼..
Weblog: a fruit knife and a boy
Tracked: 2005-11-20 16:00
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