ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2008年01月15日
 本気! 1 (1) (秋田文庫 57-1) 本気! 2 (2) (秋田文庫 57-2)
 
 今月より立原あゆみの『本気(マジ)!』が文庫化されはじめたので、これを機に、ストーリーのはじめから作品内容について触れてゆくことにしたい。とはいえ、個人的にこのマンガの本質は中盤以降にあると考えているため、どうしても後々の展開を踏まえた見方になってしまうんだろうな。いやいや、たしかにイケイケのヤクザものということであれば、序盤にこそ、その醍醐味があるのだけれども、じつはそれを逸脱する過程によって、あの、世間一般的なイメージであろう独特なアユミイズムが、不動のものとして確立されることとなるのである。おのずから汚れてしまった存在にイノセンスを再獲得する機会は訪れうるのか、このようなテーマがつまり、すべてのヤクザの夢はヤクザをやめることでなければならない、というプロットへ変換され、その延長線上に『本気!』以後のいくつものシリーズが派生する。言い換えるなら、一介のチンピラに過ぎない本気が、久美子という清純な女子高生と出会い、自分の汚れを恥じ、わきまえを知ったことが、すべての発端にあたる。たとえば、本気が自分と久美子の立場を〈オレはモグラだってさ あの人が星ならいいんだ〉と語る言葉(文庫版1巻P167)が、いかに重要であったかは(後付けであれ)、のちに『本気!番外編[1]風』で判明されるように、だ。しかし驚くべきは、本気が、そうした久美子とのストイックでピュアラブルな関係を、文字どおり、最後まで貫いたことであろう。ごく初期の段階で、本気は、兄貴分の情婦に手ほどきを受け、童貞を捨て、それからスナックのママさんと男女関係を持つが、背中に久美子を模したヴァイオリンを弾く観音様の刺青を入れてからは、おそらくは誰ともセックス(性交)をしていない。結局、久美子とは精神的に結ばれながらも、セックス(性交)をすることはなく、別れることになるのだが、それでも続・続編『本気!サンダーナ』のラストに至るまで、本気は、ただひとり彼女のみを想い続ける。このことが、ある意味で彼を無私の境地へと達しさせ、その無私であるような姿が、いくつもの修羅場に和をもたらしては、結果的に、全国のヤクザに崇められるだけのカリスマを備えさせる。ところで、そうしたカリスマを実利の面で支える片腕、次郎はまだ、この文庫版2巻までのあいだには登場していない。かわりに浩行や吉村のおっちゃんが、物語をワキからサポートしている。浩行は、いわば親に見捨てられ行き場をなくした子供であり、吉村は、社会に見限られ生活に困る年配だといえる。『本気!』における両者の人物像は、姿形を変え、立原の他作品に多く採用されている点は見逃せない。それこそ『東京』や『弱虫』では、吉村のおっちゃんと同じく、働き口のない老人が、主人公のいちばんはじめの舎弟になるわけで、ネタの使い回しといえば、まあ、そのとおりなんだけど、そこからは、この国の制度が必要としないのかもしれない人びとこそがこの国の制度が健全に機能してくれることを必要とする人びとである、といった作者の主張が、執念深く、うかがえなくもない。さて、最後になるが、本気と最大のライバルである染夜の遭遇(文庫版2巻P126〜P127)は、作者のキャリアのなかでも、異色であり、屈指の名場面である、と述べておきたい。すれ違う本気と染夜のあいだに閃光が走り、たったそれだけのことで、お互いの存在を認め合うというシーンなのだけれど、なにか(当時の少年マンガの流行に)参照項があるのか、立原作品のなかで、こういうふうなインパクトの見開き大ゴマが使われているのは、おそらく、これっきりだと思う。

・その他立原あゆみに関する文章
 『恋愛』1巻について→こちら
 『極道の食卓』
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『仁義S』
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら 
  3巻について→こちら
 『ポリ公』2巻について→こちら
 『月の教室』について→こちら
 『喰人』1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(3) | TrackBack(0) | マンガ(08年)
この記事へのコメント
漫画 本気で 検索して 探しにくかった
漫画 本気 立原 あゆみで 検索してこのページに出会えた。やさしい やくざ 白銀本気
しかし やくざ この漫画 凄い。
Posted by 村石 太2365号名古屋 at 2010年02月25日 21:36
漫画 本気で 検索して 探しにくかった
漫画 本気 立原 あゆみで 検索してこのページに出会えた。やさしい やくざ 白銀本気
しかし やくざ せつなくて 真面目? この漫画 凄い。
Posted by 村石 太2365号名古屋 at 2010年02月25日 21:38
村石さん、コメントありがとうございます。。

たしかに。立原あゆみを扱っているサイトは少なく。もうちょい読まれてもいいし語られてもよいマンガ家だと思います。
Posted by もりた at 2010年02月26日 16:56
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