ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年12月30日
 それなりのアユミストが、立原あゆみの新シリーズ『恋愛(いたずら)』の、その1巻を読んだならば、まちがいなく、こう言うだろうね。まあた、このパターンかよ、と。つまり、ヤクザの下っ端である主人公が、殺された兄貴分の復讐をちかうが、仇が同じ組織内の人間であるため、直截刃向かうことはできず、遠回りせざるをえない、というお話で、その遠回りがすなわち、主人公の成り上がりとして描かれる。口さがない人間からしたら、同作者の過去作である『東京』や『弱虫』の焼き直しじゃんね、ということになりかねない内容ではあるけれども、それらよりも時代がくだっているので、主人公のファッションが、スーツでも皮ジャンでもスカジャンでもなく、皮ベストになっているのは要注目であろう。いや、冗談ではなく、たとえば主人公のジミーが、〈惚れているのはこの人だと思いました〉とまで慕う兄貴分の服装を見られたい。完全にオールドスクールのヤクザ・スーツであり、作中を見渡しても、それはあきらかに浮いている。しかし、記号的に観察すれば、そこにはデザイナーズ・ブランドを着こなすようなヤクザからは失われたサムシングが、あきらかに表象されており、そのような姿にこそ、もはや皮ジャンやスカジャンすらも似合わないぐらいに若い世代のジミーは、唯一無二の価値を見ているのである。さて、この『恋愛』には、そうしたジミーをメインとする本筋と平行し、ワン・エピソードにつき一組の男女における恋愛沙汰が挿入され、その都度、ジュークボックスから懐かしのヒット・ナンバーが流れる、という新機軸が設けられている。おそらくは、内面のせこくなってしまった現代人(とくに男性)と仁義を欠きつつある任侠の世界とをパラレルに描くことで問題意識を発露しようとする手法に違いないのだけれども、はっきりいって、これ、うまくいっていない感じがする。しかし、まあ、このごろ飽きっぽい作者がこのフォーマットをどこまで引っ張るのか不明だから(というか、ネタがもたないでしょう)、たぶん、本格的に作品が屹立してくるのは、あと数巻物語が続いたらかな、という気がするし、何か語るべきことが出てくるのも、きっと、それからになるんだろう、と思う。

・その他立原あゆみに関する文章
 『極道の食卓』
  4巻について→こちら
  3巻について→こちら
  2巻について→こちら
  1巻について→こちら
 『仁義S』
  5巻について→こちら
  4巻について→こちら 
  3巻について→こちら
 『ポリ公』2巻について→こちら
 『月の教室』について→こちら
 『喰人』1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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