ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年12月27日
 デス・スウィーパー 1 (1) (KADOKAWA CHARGE COMICS)

 掲載誌が『コミックチャージ』(角川書店)であるせいなのかもしれないけれど、江藤淳の自殺に影響を受けたインテリ人間の死という物語の発端には、どことなく大塚英志っぽさを感じてしまい、そうしてくると、単行本のデザインからは、『多重人格探偵サイコ』や『黒鷺死体宅配便』のそれを彷彿とさせられてしまうのは弱ったものであるが、まあ、以上はどうでもいいに違いない話で、きたがわ翔の『デス・スウィーパー』の1巻は、同作者が『刑事が一匹』で切り開いた路線を、受け継ぐようなかっこうの、つまり、ヘヴィなテーマをできうるかぎりシリアスに描写することの目指された内容のマンガだといえる。医大に通い、優秀であったにもかかわらず、引きこもりになってしまった兄が、意図的に餓死し、その死体を目の当たりにしてしまった主人公は、葬儀社からの依頼で駆けつけた清掃会社の青年が行う作業に、いわく言い難い衝撃を受け、肉親を喪った心の整理のつかぬまま、あるいは自らの心の整理をつけようとして、清掃・遺品整理会社「スウィーパーズ」でのアルバイトを志願するのだった。監察医やエンバーマーなどもあわせ、死体周りの職種は、ここ数年、ずいぶんとサブ・カルチャーの表現において題材とされることが多くなり、ある意味でジャンル化されてきたようにも思う。生の重み、残された者の気持ち、といったクラシックなテーマに目新しさを加える、そういうための趣向として重宝されてきているのかもしれない。いずれにせよ、作品数は増えつつある。すこし振り返っただけでも、遺品回収を題材とした富田安紀子の『Re:Life』などが見当たる。そのようななかにあって、この『デス・スウィーパー』の特徴を述べるならば、オカルト的な側面やショッキングな事件性を極力排除したうえで、ドラマを起こしている点になるだろう。主人公に、この仕事だからこそ映える特殊な能力は備わっておらず、すくなくともこれまでのエピソードに関して、物騒な背景は存在しない。そのため、サスペンスは薄い、というか、ときおり挿入されるサスペンスが、微妙な案配になってしまっているけれど、作品の主題は、おそらく、主人公が幾度か繰り返す〈今の社会は人間が生きてゆくのに必要な何かを隠蔽している〉という声を、なるたけ生真面目に増幅させることにある。その「何か」が、いったい何なのかは、まだよく見えてこず、今のところ、この国における現代的な若者の自分探しに近い印象なのは、やや歯がゆい。ところで作中で、江藤淳と並び大江健三郎の名も挙がっているけれど、作者の念頭には「死者の奢り」があったりするのかしらね。

 『刑事が一匹』
  7巻について→こちら
  6巻について→こちら
  5巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | マンガ(07年)
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デス・スウィーパー 1巻
Excerpt: デス・スウィーパー no1 KADOKAWA CHARGE COMICS きた
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