ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年12月26日
 人類は衰退しました 2 (ガガガ文庫 た 1-2)

 おそらくSFのカルチャーに関するセンスがしっかりと備わっていれば、きっともっと愉しめたんだろうな、と思いつつ、いや、しかし、それがなくとも(あるいはこちらにそれが、ない、からなのかもしれないけれど)十分に唸らされるのが、田中ロミオの『人類は衰退しました』の2巻に収められているエピソード「妖精さんたちの、じかんかつようじゅつ」である。タイムスリップを題材にしているというのは、小説を読みはじめ、すぐに気づくのだが、そのことに気づいてしまった時点で、次から次へ錯綜する物語の、その仕組みに絡めとられ、不思議がる。ホモ・サピエンスは衰退期に入り、まさにファンタジックな存在といえる妖精さんたちに、現人類の座が明け渡された地球で、旧人類を代表し、妖精さんたちとの交渉を試みる調停官の仕事に就いた語り手イコール〈わたし〉は、未だ顔を合わせたことのない助手の出迎えを、上司でもある祖父から命じられる。極度なまでに対人関係を不得手とする〈わたし〉は、渋々ではあるが引き受けるのだけれども、待ち合わせ場所へ向かう途中、一体の妖精さんに声をかけられ、彼の差し出すバナナを食べたせいで、長くも短い遠回りを強いられる羽目になるのだった。最初に述べたとおり、こちらがSF的な教養に乏しいタイプなので、ずれを持ちながら繰り返されるループのなかで、上書きされた記憶と蓄積された(無)意識とが、たぶん、何かしらかの論理に基づいた整合をつくり上げているのではないか、と、推測するしかないにもかかわらず、構造内部における手の込みようは、着実に伝わってくる。しかも、そうしたうえでストーリー自体は、難解さに肩を凝らせず、コミカルなテンポで進んでゆくところが、印象に良い。もう一篇のエピソード「人間さんの、じゃくにくきょうしょく」も、たとえば『ガンバの冒険』と『アルジャーノンに花束を』と『スプーンおばさん』のミックスと受け取っても差し支えのないようなコンセプトが、ビターなテイスト含みのユーモアでまとめられており、なかなかにチャーミングである。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(07年)
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