ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年12月18日
 打撃王凛 11 (11) (月刊マガジンコミックス)

 血を騒がせろ、おぉおおぉォ。ここにきて、こう、最高潮にヒートするとはまさか思わなかったぜ、というやつで、こちらの期待値を余裕でフェンス越えしやがった。最終7回裏、4点のビハインド、下位打線、緑南シニア逆転の目は、皆無に等しい。この圧倒的に不利な条件下で、もはや信じられるのは、奇跡、だけである。しかし彼らにとって、奇跡とは、ただ俯いてすがるものではなく、自らの手で招き、そして掴み取るものに他ならなかった。以上の正念場を、佐野隆の『打撃王(リトルスラッガー)凜』は、この11巻で描いているのだが、ここが、これが、すごく、熱く、前巻の段階で述べたことは全部チャラにせざるをえないぐらい、奮っている。はっきりといえば、ツー・アウトに追い込まれたところから、野球マンガにアリガチな、ステレオ・タイプといってもいい展開が、続く。だが、いちページいちページに注ぎ込まれた熱量というか濃度に、圧倒され、萎える暇がない。たしかに、いくつかのチャンスは偶然でしかない、けれども、いくつかのチャンスは必然からきた結果である。それらをない交ぜに、すべての動作、すべてのセリフ、すべての表情が、何度目かのクライマックスであるにもかかわらず、すこぶる波濤をつくりあげ、不可能が可能になる、そういう奇跡の有り様に説得力を被せてゆく。ひねて鈍くなった感情が、思いっきり張っ倒される。単行本でいうと、半分までいったあたり、とうとう安長(やっちん)に打順が回ったその先はもう、あまりの壮絶さに、コマを追う目が潤んで潤んで仕方がなかった。〈自分の限界ギリギリを打ち破ったその向こうに 奇跡が待ってんだ / さてと / じゃあ俺もそろそろ行くぜ 最後の奇跡を起こしにな〉、そう言いながらも完全に消耗した安長の後ろ姿に、凜は、かける言葉を持たない。じっさい、立っているのがやっとな安長のバットは、空を切るばかり、悲愴ですらある。しかし、ようやく凜が励ましの言葉を見つけ、発したその声が届いたとき、安長は、笑う。〈・・・・んだよ あいつ まーた泣いてやがる・・・・(略)これじゃまるで ずっと俺が お前 泣かせてるみてーじゃねーか(略)・・・・ああ だけど 俺がここで打ったら さすがに笑ってくれんだろ――?〉。はたして安長のバットは、ボールを芯にとらえるのだった。〈見てろ相棒 お前のそのきたねぇ泣きっ顔 俺が今すぐ笑顔に変えてやっから〉。すまん、ここで、泣いた。何度か繰り返し読んでも、そのたびに泣けたほどの名場面である。もちろん、チーム・メイトたちのがんばりもナイスなサポートで、敵役の中根も裏の主役といってもいい凄まじい奮闘で魅せるのだが、やはり、この『打撃王 凜』の要は、凜と安長の相愛ともとれる絶対的な信頼にかかっているのだな、と、あらためて実感する。ガッツと思い遣りの正道を行く。

 10巻について→こちら
 9巻について→こちら
 8巻について→こちら
 7巻について→こちら
 6巻について→こちら
 5巻について→こちら
 4巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック