
犬井グループの老会長は、自分が死んだら身内のなくなる孫娘みことを不憫に思い、婿取りを考える。そうして見合いの席で、みことは、ルックスもよく、成績も優秀な、同い年の猿野いたるに出会う。一目惚れであった。早々に婚約を決める二人だが、いたるの真の狙いが、破談になったさいの慰謝料であることを、みことは知ってしまう。しかし弱みを握られ、結婚直前まで、付き合っているフリをすることを強要させられる。以上が、ヒナチなお『オレたちに愛はない』のアウトラインなのだけれども、いや、これがなかなか、明るく、楽しいお話で、おもしろく読んだ。世間ずれしておらず、単純な性格のみことにとって、意地悪ないたるは、それでも時々は可愛らしいところを見せる王子様だろう。最初はポーズでしかなかった二人の間柄が、どう恋愛感情に転んでゆくのかが、物語のメインである。それがコミカルに描かれる。細かい部分の描写よりも、ノリと勢いに納得させられる。ありえないというぐらいに現実離れした展開も、ここでは作者の(良くいえばだが)ヘタウマな作風と合い、相乗の効果をあげている。
『机上のrubber』について→こちら