ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年12月08日
 前向きなヒロインが王子様に出会う、というのは、ある意味でラヴ・ロマンスの王道といえるわけで、あきづき空太の『赤髪の白雪姫』は、まさしく、そうした二者の感情の接近を描く。生まれつきの赤く美しい髪を、自国タンバルンの王子に見初められ、愛妾として迎え入れられることとなった少女、白雪は、しかし自らの意志で選びとった運命を歩みたく、申し出を拒否するための逃亡をはかる。その途中、隣国クラリネスの森で出会った少年ゼンに匿われ、一時の安堵を得るのであったが、彼女を連れ戻そうとする罠の毒リンゴを、はからずもゼンが口にしてしまったことから、解毒剤と引き換えに、自分の身をタンバルン王子に捧げなければならない状況に追い詰められてしまう。と、まあミエミエではあるけれども、ネタを割ってしまえば、白雪の危機に駆けつけたゼンが、じつはクラリネスの王子で、そうした立場により白雪は守られ、事無きを得る。これが1話目の粗筋であって、つまりは物語の、だいたいの設定である。先に、ヒロインと王子が出会えばそれはラヴ・ロマンスの王道だと述べたけれど、『赤髪の白雪姫』は、現代の学校生活を舞台としたドラマ上の比喩でも何でもなく、文字どおり、一国の王子様が出てきちゃうような、まったくのファンタジーになっている。しかし、たとえば『白雪姫』のような童話とは異なり、作中人物の内側は、意外とモダンである。モダンでありつつ、素朴だといえる。このことが作品にやわらかみをつくっている。悪く見ると世界観があやふやというか、封建的な社会制度がとられているようでありながら、そうした厳密さはよく伝わってこないのだけれども、そのぶん、作中人物たちの意志は自律しているふうであって、それが彼らの姿を、伸び伸びとさせ、チャーミングにしている。そのことを含め、王子様が、ヒロインにとっての王子様というより、実際的に王子様だという点にも注意されたい。そういったヒロインとの立場の違いは、このマンガにおいて、身分の差というより、男女間のギャップに近しい。つまり、白雪が、ゼンの力になりたいと思い、宮廷付きの薬剤師を目指すのは、お姫様(お嫁さん)になる以外の方法で女性の自己実現を描くことと、ほぼイコールだと考えて良く、それをクラシックなラヴ・ロマンスに滑り込ませることで、2話目以降の展開が繋がれてゆく。


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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