ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年12月03日
 諦めたふりをするのは、じつは諦められていないからで、そういう若者たちの、青い、といってもよい躓きと立ち直りを、やまむらはじめの『夢のアトサキ』は描く。この世界を揺るがすほどの謎に絡むことのない、同じ作者のマンガでいえば、短篇集『未来のゆくえ』に収められたいくつかの作品に近しい、そういう雰囲気のシリーズである。美大に入ることが叶わず、一般の私立大学に通う青年は、あくまでも自分の道をゆき、彼にもそれを求めてくる恋人とのあいだに距離を感じはじめてもいた。しかし、たまたま知り合いの知り合いであったプロのイラストレーターの仕事を見、その興奮を遠方に住む恋人に伝えたく、寒い真夜中にスクーターを走らせる。第一話の、こういうところ、青年の内側に衝動が沸き上がってくるあたりの描写に、伝わってくるものがある。基本的には、その青年を含む集団を軸とし、モラトリアム下でのコンプレックス・パーソンたちを捉まえた内容だといえるが、彼らの鬱屈が、狭いサークル・ゲームの参加者であることから生じているのでも、またそこに回収されるのでもなくて、あくまでもその外部を意識してしまうがゆえに現れ、それを乗り越えようとする意識へまでストーリーを持っていっているため、いじいじとしていながらも、ほとんど閉塞感を覚えることがなく、さわやかさは、先のことがわからなくとも、あるいは先のことなぞわからないからこそ、たえず何かを希望し続けてもよい、たとえばそのようなかたちで、青春の像を切り出している。

・その他やまむらはじめに関する文章
 『神様ドォルズ』
  1巻について→こちら

 『蒼のサンクトゥス』
  5巻について→こちら
  1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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