ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年12月01日
 蒼太の包丁(16) (マンサンコミックス)

 純子から珍しく電話をもらった花ノ井が〈いやあ『富み久』は相変わらず青春ドラマしてると思ってな〜〉とからかうのであったが、まったくそのとおりだよ、花ノ井と入れ替わりに『富み久』へやって来た雅美も加わって、主人公・蒼太を中心とする恋愛模様は、これまた、ずいぶん賑やかなご様子である。そうした部分に関し、わりと大きな動きが、この『蒼太の包丁』の16巻では見られる。蒼太から妹のような存在にしか扱われていないことを気にする純子は、急って、思い切った行動に出るのだけれども、そのことはかえって、彼女に想いの届かなさを知らしめてしまう。そればかりか、ついついとってしまった雅美への牽制から、自分の不甲斐なさを深く実感する。蒼太が片想いをするさつきも含め、このへん、女性登場人物たちの蒼太を追う視線に沿うかたちで、ストーリーは展開してゆき、はたして蒼太がクリスマス・イヴを誰といっしょに過ごすかというあたりで、ちょっとした分岐を果たすのは、まあ、たしかに旧き良き青春ドラマといった感じだよね。しかし蒼太が、料理人としてはともかく、恋愛面においては、決断しない主人公になっているのは、その鈍感さを差し引いても、良いご身分じゃないか、と思う。主人公がもてるというのは、フィクションならではの特権だともいえるわけだけれど、料理マンガの場合、ルックスや性格というよりは、食文化に対しての真摯な態度が、それを保証することが多い(某作品のぐうたら新聞記者などは、その最たる例だろう)。それというのはつまり、何かひとつのことだけ貫く職人気質こそを上等とする、あるいは、食文化に深く通じることが人間存在への愛情と一致する、という思いなしが、前提としてあるためだ。また、料理マンガというと、一般的に保守的なイメージがつきまとうのも、物語よりも先に、そういったコードとでもいうべきものが読まれてしまうからであろう。純子と須貝の急接近も、それの応用といえるわけで、妥当ではあるんだが、すこしおもしろみに欠ける。

 15巻について→こちら
 14巻について→こちら
 13巻について→こちら
 12巻について→こちら
 11巻について→こちら
 10巻について→こちら
 9巻について→こちら
 8巻について→こちら
 7巻について→こちら
 6巻について→こちら 
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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