ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年09月16日
 パーフェクト・ピッチ・ブラック

 ケイヴ・インについて、僕は、風評は絶賛モードの前作『アンテナ』が、ぜんぜんノレなかったクチなので、やっぱり初期だよね、というか『JUPITER』までだよね、と、クソみたいな偏狭マニアのように、だせえことを言ってしまうぐらい、熱が下がり気味だったのだけれども、新作『パーフェクト・ピッチ・ブラック』を聴いたとたん、盛り返した。やった、やったね。このバンドは、やっぱ並じゃない、と思うよ。

 まとまりの良さでいえば、あきらかに『アンテナ』の延長先にあるものだ。メロディアスなミドル・テンポ路線に変更は、ない。空気が膨張してゆくような、あるいは真空にパッキングされた緊張が、はたと途切れる、余情の味わいも生きている。だが、大きな違いを一点挙げるのであれば、瞬発的なダイナミズムが、具体的なカタルシスを迫り上げる、そういう体でもって楽曲が進行している、といった感じになるのだろう。

 『JUPITER』以降、いや正確には『CREATIVE ECLIPSES』EP以降か、ケイヴ・インの表現、轟音は、抽象化していった。初期の頃の、直情的で、わっかりやすく、平板なアグレッシヴさではなくて、無限の空間を漂うような、とりとめもなく上下左右を転回させることで、奥行きを出す、そういうギター・ロックへと変遷していった。そのことの、超高度な達成が、『アンテナ』であった。楽曲自体は、コンパクトなサイズで設計されながらも、組み上げられたサウンドは、なぜか、遠いが近い、近くが遠くに見えるという、遠近法の狂ったエネルギーを内部に抱えつつも、それでもきっちりと一枚の絵に収まっている、完成度の高く、うつくしい抽象画を思わせたのだった。ただ、それはちょっと、僕みたく、リスニング重視じゃない聴き手には、ナシといわないまでも、縁遠いシロモノでしたよ。アクセントをつけて、明示されるわけではない、強すぎる立体感が、逆に、フラットとして、霞み見えたわけだ。そういうこともあって、日本の音楽雑誌が、ああも褒め称えるような共感が、どうしてそこに生まれたのか、僕には分析できない。

 しかし『パーフェクト・ピッチ・ブラック』である。これが、先ほども書いたが、楽曲に再添付された具体的なカタルシスによって、捉まえやすい熱を、アルバム中に行き届かせている。もちろん『タイズ・オブ・トゥモロウ』EPなどで展開された、穏やかで、伸びやかな叙情も、消え去ってはいない。それらが、コントラストを塗り分ける筆になって、雄大なパノラマを描いている。

 前半のナンバーにおいて、繊細なメロディ・ラインをすくいあげるヴォーカルの対となり、披露される咆哮が、もっとも大きなインパクトだろう。新機軸である。いや昔だってぜんぜん叫んでたじゃん、という向きもあるだろうけれど、ゴツゴツとしたリフをもって駆け出そうとする4曲目「トレパニング」に顕著なように、けっしてハードコアな絶唱、スクリームというのではなくて、むしろアメリカン・ストーナーのマナーに則った、ロックン・ロールの勢いを借りるスタイルに他ならない。それを支援するため、テンポ・アップした演奏が、ダイレクトに、ダイナミズムを形作っているのだ。

 そのような序盤、激しく、盛り上げ、その世界観に聴き手を没入させたところで、7分に及ぶ長尺ナンバー「パラノーマル」を置き、サウンドの厚みをぐっと知らしめるという構成は、たぶん意識して為されたものだと思う。そうして流れ出す重層的なノイズに、取っ付きにくさはなく、バンド名がそのまま冠されたラスト、アコースティックの軽やかな調べと低音のくぐもった響きの入り混じった「ケイヴ・イン」に至ったとき、このバンドの深みにすっかりとハマっていた頃の自分を、思い出す。


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | 音楽。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック

CAVE IN - Perfect Pitch Black (2005)
Excerpt: Perfect Pitch BlackCave In Hydra Head 2005-09-13売り上げランキング : 991おすすめ平均原点を見つめなおした作品Amazonで詳しく見る by G-..
Weblog: CDVADER
Tracked: 2005-09-23 08:51
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。