
帯の惹句には〈毎日仕事に追われ、疲れたという言葉すら忘れてしまった男達に捧げる1枚!〉とあって、おいおい、やけに労働者階級的な煽りだなあ、と僕は思う。ルセロ(LUCERO)の4枚目の作品にして、日本デビュー盤になる『ノーバディーズ・ダーリンズ(NOBODY’S DARLINGS)』である。僕がこのアーティストの音に触れるのは、じつはこれが初めてのことなのだけれども、いや、しかし、地味に、よかった。ノー・ギミックなアメリカン・ロックが鳴っている。ライナー・ノーツを読むと、ポーグスやリプレイスメンツ、トム・ウェイツやブルース・スプリングスティーンなどから影響を受けているらしいが、なるほど、系統としては、ポール・ウェスターバーグの一連のソロ作を彷彿とさせるものだろう。ことによったら、クラッカーやソウル・アサイラムの名前を挙げてもいい。アメリカン・オルタナティヴを経由しながら、普遍へと届きそうな、歌をうたう、朴訥であればあるだけ、説得力が増す、そういう熱を込めて。メロディだけを捉まえれば、もしも汗くささを抜き、軽やかさを増し、ハーモニーを重ねたら、すぐにでも垢抜けたギター・ポップになりそうな感じがする。だが、そうはしない。たぶん、そういう形では、このバンドが表現しようとするエモーションは、現れないからである。それに、時代性とか、うるせえよ、ばか、誰も待っていない海まで勝手に流されてろ。でっかい歩幅で、マイ・ペースに進んでゆく、そういう力強さを感じる。不器用で、不格好で、そのことが自然体だといえば、そのとおりで、ときおり滲み出る哀愁のフレーズに、男の色気がムンムンと香っている。かっこういい。ほんとうに、理屈じゃなくて、直感のレベルで、惚れ惚れする音だ。
