ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年11月17日
 12の月のめぐる間に 2 (2) (プリンセスコミックス)

 伝説の吸血鬼と人間のあいだに生まれた「吸血鬼の娘(ヴァムピーラ)」である奏は、17歳の誕生日から一年間のうちに、自分が、人間して生きるか、吸血鬼として生きるか、を決断しなければならなかった。そのことをめぐり、ごく平凡な女子高生でしかなかった彼女の周囲が、にわかにざわつきはじめる。彼女の父親に敵対する吸血鬼や、吸血鬼の駆逐を使命とするハンターたちの攻防が、表面化し出したのである。しかしそれでも奏は、彼女が飼っている猫のフクを仮の姿とする謎の男タロウや、幼馴染み(で、その正体を奏には隠しているハンター)の楓に守られながら、平和な学校生活を送れている、今のところ。吉川うたたの『12の月のめぐる間に』は、現代を舞台にしたシリアスな吸血鬼ものといえる内容であるが、ちんちくりんなヒロインを目的に美男美女が集まってくるていのコメディとしても読める。1巻の段階では、そうした設定がオーソドックスであり、話運びもやや地味かと思われたが、この2巻に入って、また一癖も二癖もありそうな登場人物が増えてさあ、ずいぶんと賑やかで、たのしくなってきた。おおきな魅力は、やはり、奏以外の登場人物たちの内側が、こちら読み手には伏せられている点であろう。表向きはギャグも厭わないのに、その裏では、それぞれの思惑を胸に、策略を張り巡らしている。まあ、そういったテンションの保ち方など、同作者の『すっくと狐』に通じるところもあるが、こちらのほうが、いくぶんファニーな印象を受けるし、物語のなかで、人間側のハンターと吸血鬼とが、たしかに啀み合いながらも、一個の世界で共存している風景を、違和感なく取り込んでいるのも、作品の奥行きに繋がっている。ここでの人間と吸血鬼の違いとは、宿命というよりは、属性とでもいうようなものである。つまり、カテゴリー的な闘争に巻き込まれた少女が、その渦中において、自らの属性をどこにどう準拠してゆくのかが、重要なテーマとなっている。現段階では、人間として生きることを強弁する奏であるが、このへんの心的なバランスは、おそらく、他の登場人物たちとの交わりによって、揺らぎ、補整されてゆくのだと思われる。そのために、吸血鬼はただかっこうよく描かれるのではなくて、かっこうよい人間らしく、要するに、間抜けなところもありの、完璧ではない超人として描かれている。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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