ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年10月29日
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 『金剛番長』は、『週刊少年サンデー』第47号(先週の水曜日に出た号ね)よりはじまった鈴木央のあたらしい作品であるが、まあ、まだ一話目なのでそんなに結論を急くこともないのだけれども、これをどう評価するかというのが、ひじょうに悩ましく、最近はこのマンガのことばかりを考えている。おそらく、ネタとして読む、というのが新世代的にスタイリッシュなんだろうが、こちとら野暮いタイプの人間だからさあ、硬派をどう描くかというのはサブ・カルチャーにとって、いや、人生にとって重要なテーマだと信じている以上、ネタとかベタとか、じつは何も言ってはいないようなことは口にしたくもないのであった。こういう熱血ガクランものというのは、旧くよりいくつか系統があるわけだけれど、しかし伊藤清順の『ぶかつどう』(95年)あるいは『ヒッサツ』(01年)あたりを最後に、すくなくとも少年マンガのシーンでは終息してしまった感がある。いや、『ぶかつどう』も『ヒッサツ』も単行本化されなかったという事実を踏まえると、その時点で、どれだけ批評性(パロディの精神)をすぐれて取り込もうとも、大勢にとっての重要性はほとんど消え去っていたのかもしれない。このことは、たぶん、ヤンキー・マンガにおいて、登場人物たちがあまりガクランを着用しなくなった問題とパラレルな可能性があると考えられるのは、ガクランを着るというのは、つまり、自覚的に学校を背負うというのと、ある意味で同義であって、たとえば例外的に阿部秀司の『番長連合』(03年)はどうだろうか、といえば、あれもたしかにガクランを着てはいるとしても、登場人物たちが帰るべき共同体は、あくまでも学校の外側にあったことを忘れてはならない。言い換えるとしたら、自分たちの通う学校がイコール自分たちの帰属する共同体であることが、熱血ガクランものの根幹には置かれている、ということである(これを理由とし、ジャンル的に、ヤンキー・マンガとの差別化を図ることもできる)。それこそ宮下あきらの『魁!! 男塾』(85年)なら、まさしく「男塾」がそうであろう。また車田正美の『風魔の小次郎』(82年)なども、ごく初期おいては、その地域の各校が対立するなか、あくまでも登場人物たちは特定の学校に所属する生徒として設定されていたわけで、王道ともいえるしもさか保の『ガクラン八年組』(83年)にしても、異色だが細馬信一(原作・菊池秀行)の『魔界学園』(89年)にしても、その一点に関しては通底している。そうして、作中に描かれるのは、もちろん、男の子たちが、いかにして硬派に生き、そして死ぬか、の姿に他ならない。さしあたって『金剛番長』においても、第1話(1撃目!!)のラストで、主人公である金剛晄が雷鳴高校へやって来た転校生であることが表明されており、そのことが今後に展開されるだろう波乱を予感させるだけに、まぎれもなく熱血ガクランもののセオリーを踏襲したスタートだといえる。また、〈番長ってのは、漢ん中の漢なんだ!!〉といわれるような、作品のテーマと深く関わるに違いない一個の生き様を〈弱い者には黙って、手を差しのべ、自分のスジは貫きとおし、たとえ相手が百、千の軍勢だろうとたった一人で立ち向かい…仲間のためには自分の命張れる漢…………〉と、先行する作品群によってさんざん繰り返されてきたアフォリズムを用い、この序盤で、あらためて明確化してあるのも、十分に効果的であるように思う。だからこそ、すこし引っかかるのは、そこで男を漢(おとこ)と読み替えている、そういう力学の部分について、である。そもそもの由来はともかくとして、ここ最近のサブ・カルチャーでは、この漢(おとこ)の使われ方がどうも、ただの習わしでしかないような印象を受ける。要するに、みんなが使うから使う程度の意味しか、じつは持たされていない。さらにいうと、男ではなく、漢と示すことで、あらかじめ男女間における対他関係を免れるための、便利な使われ方をされているようにさえ思える。かつて硬派にとって、女性の存在は、ある種のしがらみであった。たとえば、『ガクラン八年組』の山崎平九郎などは、そのことをあますことなく体現した登場人物であった。とある窮地で、愛と友情のどちらをとるか、で悩むのである。こうした思想上の対決は、男を漢と読み替えるような力学からは生まれてこないのではないか(大げさかな)。いずれにせよ、漢という読み替えは、今やもしかすると、安易なイデオロギーへのすり寄りでしかなく、判断停止に近い部類の在り方なのかもしれず、ただ頭が固いというだけで硬派になられては弱るよ、と個人的に言いたい。はじめに述べたとおり、まだ1話目が終わった段階なので、結論を焦る必要もないが、この時代にあえて熱血ガクランものを描こうとする作者が、そのことにどこまで自覚的なのかは、ちょっと気にかかってしまう。


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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