
知り合いの人たちが話題にしていたので購入したポール・アンカさんの『ロック・スウィングス』は、ボン・ジョヴィやR.E.M.、ニルヴァーナなどのヒット・ナンバーを、その名のとおりスウィングする、アダルトなナイト・ラウンジ風に仕立て直した内容なのだが、いや、これがね、思いのほか宜しい感じだった。趣としては数年前にパット・ブーンが出したメタル・カヴァー・アルバムに近しいのかな。ただし、あれよりもずいぶんとアレンジが緻密だし、ゴージャスに出来上がってる気がする。とにかく原曲の持つイメージとは180度違う世界観が垣間見られる。サヴァイバーの「アイ・オブ・ザ・タイガー」などは、そうだと言われなければ、あんがい気づかないのではないだろうか。聴く人によっては仰け反ってしまうかもしれないけれども、こういう落ち着いたのもいいね、と、リラックスして浸れる雰囲気が醸し出されているのだった。ワン・フレーズを、意味やエモーションのレベルではなくて、音韻のレベルで抽出しているため、うたう声は素直に響く、伸びやかに。ヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」とか、すごく楽しい。しかし、やはり流石だと思わせられるのは、オアシスのメロディの強さである。他の楽曲は、どちらかといえばポール・アンカの方に寄せられているように聴こえるのだが、「ワンダーウォール」の場合、ポール・アンカが楽曲の側に寄っていっているみたいに聴こえる。そこらへん、オアシス自身がかつて「メタリックなギター・ソロがなければビートルズ的でグッド」ってな風に評したサウンドガーデンの「ブラック・ホール・サン」、それのここに収められたヴァージョンと比べてみれば、はっきりとわかる。などと、けっこう新しい発見もあったりするのだった。
