ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年10月13日
 ハンド×レッド 2 (2) (IDコミックススペシャル REXコミックス) (IDコミックススペシャル REXコミックス)

 過去回想編は、今日のマンガ表現全般、とくにファンタジー系の作品においては、もはや定番ともいえる展開であるけれども、倉田英之(作)と星樹(画)の手による異世界の物語『ハンド×レッド』は、この2巻(正確には1巻のラスト)という早い段階で、それに突入している。興味深いのは、「あとがき」で倉田が〈四回ぐらいで終わらせるつもりが、一巻かけてもまだ続くスケールに膨れています〉と述べていることで、ほんとうにそうなのかを読み手の側は知れないが、同様の発言は、他のマンガの作者にもよく見受けられるものであるから、過去回想編には、そうした膨張性というのが普遍的に備わっているものなのかもしれないなあ、と思う。さらにもう一点つけ加えるなら、ここで、この過去回想編で描かれているのが、作画上、黒い髪の少年と白い髪の少年(じっさいは金髪であれ銀髪であれカラー・ページ以外では白となる)の愛憎劇になっている点である。もちろんこれも、ファンタジーの系をおもにマンガ表現の多くが、なぜかしらかのように採用するケースだといえる。おそらく、このふたつは相互的な意味合いをもって、フィクションのなかに発生するものだろう。ストーリー本編の途中で出会ったもの同士が、やがてライヴァルになるのではなくて、ストーリー本編のはじまった時点ですでに、作中人物たちは、ライヴァルであることを宿命づけられている。その因果が明かされるために、過去回想は必要となるわけだが、そこでライヴァルの条件として語られるのは、同じコインの裏表であるかのような、つまり、それぞれがそれぞれのオルタナティヴな可能性であるかのような、そういう関係性に他ならず、彼らが戦わなければならないのは、善と悪にきっぱりと分かれ、簡潔に判ぜられる二項対立の必然というよりも、いわばドッペルゲンガー的な存在である以上、どちらか一方しか必要とされない、という理由に拠っており、一個の魂を共有しながらも、別個の肉体を生きることの表象として、黒と白の髪のコントラスが、もしかすると作者らの無意識のレベルで、自然と設けられるのではないか。すくなくとも『ハンド×レッド』において、黒髪の主人公ジムと白髪の宿敵ルカは、性格こそ相反するが、戦災孤児という同一の前提を持つがゆえに、じょじょに親和性を高めてゆき、そのことが過去回想編に綴られ、そして本編では、結果、お互いの心臓を奪い合う。

 1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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