ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年08月16日
 PS-羅生門 9 (9)

 不運な事故により、警察官であった夫を亡くした紅谷留美。彼女もまたひとりの刑事として、そして幼い息子を抱える母として、その身を粉にしていた。そんな彼女に転勤の命がくだる。配属先である東都警察署は、人々から羅生門と呼ばれるほどに常識を意に介さない、はぐれ刑事たちの溜まり場であった。亡くなった息子の成長を夢想し続ける弓坂。薬物がらみの犯罪に容赦がなくひどく暴力的な安全。警官の身でありながら膨大な借金を背負う土橋。高い運動能力と脆い精神力を併せ持つ野原。何事にも冷静で単独行動を好む町田。植物人間となり目を覚まさない妻の入院費のためにおでん屋を副業として営む刑事課長。そして紅谷とタッグを組むことになる中年刑事黒田は、被害者よりも加害者に対して感情移入をする性格のため、つねに上層部からは目をつけられていた。当初は、そういった同僚たちのアウトサイダーぶりに不信感を持っていた紅谷であったが、行動をともにする数年のうちに、じつは人間らしいその本質に感化されてゆくのであった。そうして続く日常の最中、元悪徳警官が何者かに襲撃されるという事件が起きる。警察内部からも、ヤクザや犯罪組織からも忌み嫌われていた存在だけに、その事件は今まさに闇に葬り去られようとしている。誰も捜査を望んでいない状況下、自分の信念に従い紅谷は、危険を承知で、ひとり目撃証言を集めるのだった。というわけで、この巻にて、いったんの完結である。が、しかし、このマンガは、ほんとうに秀逸であったと思う。人間とはなにか? 幸福とは何か? 愛情とは何か? 正義とは? 悪とは? そういったステレオタイプな問いかけを、表層に飛び交わせながら、根底の部分では、答えなどない、といった諦念のようなものが敷かれている。だが、諦念はけっしてシンプルな敗北ではなくて、それでも問い続けなければならないという、執念に近しい、強靭なメッセージへと逆転勝利している。もしも目の前で理不尽な暴力がふるわれたとき、この世のなかはどこか間違っている、と誰かが言うだろう。あるいは、誰もが言うだろう。けれども、では世のなかの正しい姿とはどのようなものか、そういった問いに対して、誰がいったいどのような言葉を返すことができるのだろうか。わからない。それでも僕たちは言い続けなければならない。この世のなかはどこかが間違っている、と。そのために、死なず、生き続けなければならない。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック