ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年08月12日
 タッチ 7 完全版 (7) タッチ 8 完全版 (8) タッチ 9 完全版 (9)

 〈ストレートは上杉、変化球はこのおれのコピー、メッキがはがれりゃただの小心者さ〉と勢南の西村に評されてしまう吉田は、そもそものモチベーションが上杉達也のオルタナティヴになることだったわけだが、上杉達也の場合は、けっして上杉和也のオルタナティヴになることを目指しているのではなかった。ここらへんが『タッチ』というマンガの肝でもある。周囲の人間は、達也が和也並の活躍をし、和也の不在を埋める、和也のかわりとして見事その役割をつとめることを期待するのだけれども、当人は、むしろ和也以上のレベルに自分を持っていくことを志している。しかし、上杉和也という人物は、すでに亡く、その存在感は、もはや残像でしかない。蜃気楼をいくら追いかけても追いかけても追いつけることはないのと同様、不在の人物と勝負し、乗り越えることは不可能に近しい。だが、もしも、ひとつだけ乗り越えた証明になるものがあるとしたならば、それは浅倉南を甲子園に連れて行くことなのだろう。達也は、南を甲子園に連れてゆこうとする、それは和也の夢を叶えてやることであると同時に、和也のかわりをつとめることでもあり、その結果として和也を乗り越えたことにもなるのではないか、達也が野球を続けるモチベーションは、そのような体でキープされている。さて。いよいよ柏葉監督代行の登場である。この完全版でいえば、10巻以降になるのだと思うが、僕は『タッチ』終盤のクライマックスは、新田との対決ではなくて、達也と柏葉監督代行との、絶妙な心理戦であると考えている。柏葉監督代行がその胸のうちに抱える闇の原点は、才能のある兄のオルタナティヴとして使い捨てられたという事実である。しかし、同じような宿痾に縛られながらも、けっしてネガティヴに陥らない達也や南との接触を通じて、柏葉監督代行は、自分は他の誰の代わりでもないことを教えられる。

 第4巻から第6巻までについて→こちら
 第1巻から第3巻までについて→こちら 


posted by もりた | Comment(2) | TrackBack(0) | マンガ。
この記事へのコメント
上杉の相手(ライバル)が、クライマックスの時点で新田ではないことには当時非常に鈍かった私でもなんとなくわかっていましたが、まさか監督代行とは予想だにしていませんでした。こういう錯綜した人間関係を最近流行のラカン派精神分析で読み解くと面白いんでしょうね。
Posted by 戸田修司 at 2005年08月13日 07:56
戸田さん、どうもです。

そういえば、『タッチ』における主要な登場人物たちは、みな一様に何かしらかのコンプレックスを抱えていますね。
その最たる例が上杉達也なわけですが。
Posted by もりた at 2005年08月16日 09:08
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