
雪丸もえの『SWEET16』には、デビュー時からのマンガが、ぜんぶで五つ、入っているのだけれど、なかでも「春待ちプラットフォーム」と「愛しいあなたへ」の二作品を、とくにおもしろいと感じた。それはどうしてだろう、と考えたとき、ああ、そうか、どちらもヒロインの片想いと告白といったパターンをとっていることに、気づく。いやなにも、こちらがそういったお話を好き、との個人的な理由をいっているのではない。そうではなくて、相手の気持ちをたしかめるべくの行動より、ただ自分の気持ちを相手に伝えようとする、そのような、まっすぐとした情熱の描き方のほうに、作者の良さがあると思われるのだ。たまたま通学途中の駅で知り合った男子に惹かれる「春待ちプラットフォーム」にしても、年の差の離れた教師へ一途にアタックする「愛しいあなたへ」にしても、ポジティヴな力に後押しされ、ささやかだが、しかし、おおきな願いを叶えようとする少女の表情が、まぶしいぐらいにキュートである。