ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年07月30日
 たしか小谷野敦がどの本だかで、まるで作文だみたいな一言で切りすてていた長嶋有の小説であるけれども、好意的な読者にすれば、いやいやそこがいいんじゃないか、といったところではないだろうか。すくなくとも僕はそのクチである。文体も内容も、深遠さとは無縁な軟性をまとっており、それが穏和な読後感に結びついている。まあヌルいといったらヌルいのかもしれないけれども、そのヌルさがピースといった感じである。でもって、これは長嶋初のエッセイ集であって、さまざまな場所に発表された雑文がひとまとまりにされている。それこそ作文的な度数は、小説作品の何割か増しであり、やっぱりそこがよろしいのではないか、と思う。どうでもいいようなことを真面目に書く、その不真面目さが明るく、あはははは、ピースといった感じなのだった。ことによるとエッセイの類というのは、楽しく読むためには、小説よりもスムーズな感情移入を必要とするのであって、書き手の考えや気分に共感できないと、おそろしく退屈に思え、「へえ」という物珍しさすらなければ、そっぽを向きたくなってしまうものだが、ここで披露されている話の大半は、僕などは70年代生まれという同世代ゆえの理解がある分だけ承伏しかねる箇所があったりもするのだけれども、しかし、どれもくっだらないおもしろエピソードとしての訴求力を持っていて、読み心地それ自体はたいへん楽しい。また、芥川賞受賞前後に触れた箇所は、長嶋有という作家のサイド・ストーリーとして、興味深くもあった。

 『泣かない女はいない』についての文章→こちら
 ブルボン小林『ジュ・ゲーム・モア・ノン・プリュ』についての文章→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書。
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