ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年09月09日
 堕ちた天使と金色の悪魔 (講談社ノベルス ウF- 16)

 活字にかぎらず、物語を扱う他の分野全般を見渡しても、浦賀和宏ほどカッティング・エッジな人物はそうはいないのではないか、と思うぐらい、異様な境地に達しつつある「松浦純菜&八木剛士」シリーズであるが、その新作『堕ちた天使と金色の悪魔』も、やはり、すごいことになっている。だいたい、作者本人が『さよなら純菜 そして、不死の怪物』以降の〈八木剛士は無敵の喧嘩殺法『ヤギ・カタ』を習得し、悪の組織MCAと壮絶な死闘を繰り広げていきます〉と冗談めいたことを述べている(『メフィスト』5月号)のだけれども、案外そのとおりの話にもかかわらず、ぜんぜん印象が違うから、じつに困るよ。それにしても、ほんとうに八木剛士は、こちらの期待を裏切らない男だな。『堕ちた天使と金色の悪魔』は前半、ヒロイン松浦純菜の視点であった前エピソード『世界でいちばん醜い子供』の裏面とでもいうべき具合に、進んでゆく。あそこで、ほとんど出番がなく、純菜のピンチにかっこうよく駆けつけた剛士が、じつはそのころ何をしていたのかが語られるわけだが、皆から怖れられる悪魔として覚醒したあとも、あいかわらずのルサンチマンを胸いっぱいに、学校へ行く唯一の楽しみといえば、コンピュータ室でインターネットを使い、お気に入りの外国人ポルノ女優の無修正画像などを集めることだったりする。〈おお、できた、できた。A4のコピー用紙いっぱいに、プッシーまで鮮明なモニカ・スウィートハートのお姿がプリントされて出てくる。それを皺が寄ったりしないようにクリアファイルに挟む。そしてバッグにしまう前に、もう一度マジマジと見つめる。この太股を舌でペロペロと舐め回せるのなら、仮に寿命が十年縮まったとしても構うもんか〉と、すばらしくすばらしい変態ぶりは健在である。まあ、当人に自覚はないとはいえ、いちおうは世界の創世と破滅に関わる(らしい)重要人物なのだから、もうちょい自重していただきたい。また、熱心なガンダム・オタクである彼が、右翼の教師に影響されるくだりは、もしかしたら今日におけるポリティカル・フィクション的な想像力に対する当て擦りになるのだろう、か。大層なイデオロギーですらも、しかし結局のところ、欲望や嫉妬には負ける。そして、ついに剛士はあれがあれでああなって、シリーズのレギュラーをつとめる南部までもがあんなことになってしまうだなんて、いやあ、ここまできてもまだ、まったく先が読めない展開が続き、目が丸くなる。

 『世界でいちばん醜い子供』について→こちら
 『さよなら純菜 そして、不死の怪物』について→こちら
 『八木剛士史上最大の事件』について→こちら
 『上手なミステリの書き方教えます』について→こちら
 『火事と密室と、雨男のものがたり』について→こちら
 『松浦純菜の静かな世界』について→こちら

 「リゲル」について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(07年)
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