ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年09月07日
 パッサカリアOp.7 (ジャンプコミックス)

 佐木飛朗斗が原作を提供したマンガでは、ときおり、音楽への憧憬が、重要な要素となって現れる。その最たる例は、なんといっても『特攻の拓』(所十三)に登場する天才ギタリスト天羽時貞の存在だろう。ご存知のとおり、彼の演奏は、物語のその後を左右し、作品の精神性を支えるほどに、おおきな役割を果たしていた。そこから読みとれるのは、音楽と魂は深く結びついているという、ひとつの主張である。こうした言いを直截に託したのが、山田秋太郎に作画を任せる『パッサカリア[Op.7]』だということは、次のようなイントロダクションによって、あきらかだ。〈誰かが言う「生きてる意味なんか無い…」「誰かが」「言う」「死んじゃったっていいし生まれてこなくったってよかったし…」誰かが言う「オマエ達には失望した」だから…「だから神は音楽を創造(つく)った」〉。御枷園仁基、印波烈、麻生道夫、の幼馴染み三人は、世界最高水準の国際コンクールのピアノ部門予選に揃って臨むも、その演奏スタイルが、場の規定と品位にそぐわないものとされ、あえなく失格となってしまう。一方、かつての同門、藤堂政美は、完璧に精確な演奏をもって予選一位通過を果たす。スタンスにおいては、けっして相容れない彼らであったが、しかし、音楽だけが唯一自分の生きる意味を証明する、という一点で共通していた。そもそもが短期集中連載という名目で発表された作品だとしても、この長さが作者らの望んだものか、掲載誌であった『月刊少年ジャンプ』休刊という事情によるものなのかは不明で、物語は序盤も序盤、ほとんど登場人物たちのプレゼンテーションだけで終わってしまっている。とはいえ、主題は、やはり佐木が原作をつとめる『R-16』(桑原真也)に等しく、ルーツに束縛された人間がいかにしてそこから自由になるか、にあるのだと思う。これは、もちろん『特攻の拓』のなかで天羽が部分的に背負わされていたものでもあるし、仁基と烈、道夫の友情は、『R-16』における純弥、真希央、テルのそれを彷彿とさせなくもない。したがって問題となってくるのは、そのようなテーマを、ヤンキー・マンガのスタイルではなくて、音楽を表現するスタイルのマンガに、どうやって落とし込んでいくか、であっただろう。残念ながら、この『パッサカリア[Op.7]』に関しては、そこまでを十分に描いているとはいえないけれども、同コンビは『ビジネスジャンプ』第23号(11月1日発売)より、今度はロックを題材にしたマンガをスタートさせるらしいので、そちらに期待したい。

・山田秋太郎の作品に関する文章
 『解錠ジャンキー・ロック』第1巻について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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