ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年09月01日
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 「あとがき」によると、そもそもは02年の秋から05年の冬にかけ、同人誌で発表した作品を、このたび上下巻のかたちでまとめたものであるらしい、シギサワカヤの『九月病』は、近親相姦の兄妹を軸に、救われたい救われないの観念を上下するような内容の、マンガである。この手のシチュエーションは、当然のように、ストーリーを暗く、重たくしがちであるが、この作品からは、そういう印象をあまり受けなかった。もちろん、作中人物たちの悩みは、深刻で、死ぬことも、ときどきは考える。しかし、その深刻さは、良くも悪くも、人工的であるふうに思われる。そのことはたぶん、手法的な部分に拠っている。用意されたパセティックなエモーションは、ほとんどモノローグに費やされ、作中人物たちは、あたかもそのモノローグに従って、行動しているかのように見えるのだ。そのへんはやはり、わざわざ、といったおもむきがつよい。けれども逆に、いや、だからこそ逆に、彼らが、モノローグから自由な行動をとっている場面は、生き生きとして、際立っている。コミカルで、愉快なところもすくなくはなくて、じっさい作者も、そちらのほうをたのしんで描いたのではないか、という気がしてくる。モノローグからの自由というのは、この場合、ダイアローグによってもたらされているといえる。物語は、きわめてハッピー・エンドに近しいかたちで、閉じる。近親相姦の罪に苛まれる兄妹は、ふたりきりの閉じた世界から、他の人びととのコミュニケーションを通じ、解放される。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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