
女性陣のレギュラー化は、男の子ばっかりの高校生活という基本的なコンセプトにどう作用するかと思われたが、以前にも増して、登場人物たちのエモーションを、賑やかに、彩る。それはつまり、人間関係は、男女の間柄にのみ収斂するのではなく、さまざまなかたちに発展しうる、というのが、ひとつ、和泉かねよし『メンズ校』のベースにはあるからだと思う。さて、この4巻における最大のトピックといえば、中学時代の恋人エリカとの悲劇的な別れを引きずる牧に、あたらしい恋のはじまりを予感させるような、そういう出会いが訪れることであろう。その牧が、なぜか心惹かれる女子校生の名前もまたエリカというのは、ちょっと出来すぎだあ、と言いたいところだけれども、こうしたメロドラマを、しかし上向きなテンションで、だらだらとせず、和気あいあいとやってしまえるあたりに、作者のセンスがよく出ている。また、不覚にも作中の「腐女子」というタームを目にするまで、エリカに与えられている資質が、俗にいう「ツンデレ」らしきものを模してあることに気づかなかったのだが、そういった今日的にキャッチーな要素を、たんにコマーシャルなフックとして使うのではなくて、ちゃんとドラマのレベルと関連づけてあるのは、巧い、といえるし、ある種の批評性さえ感じられる。それこそ青少年向けに、紋切り型のラブコメを紋切り型だからいんだよ、と言わんばかりに描いている向きには是非とも見習って欲しい、ほどである。
2巻について→こちら
1巻について→こちら
・その他和泉かねよしに関する文章
『そんなんじゃねえよ』9巻について→こちら
『二の姫の物語』について→こちら