ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年08月24日
 メフィスト 2007年 09月号 [雑誌]

 『メフィスト』9月号掲載。北山猛邦の『恋煩い』は、都市伝説をモチーフとした短編小説である。〈たった一学年違うだけで、私と彼の距離は気が遠くなるほど離れているように思えた。それは向かい合ったホームに立つわたしたちの距離に似ている。こうして手が届きそうな場所に彼の姿を見ることができていたとしても、実際に触れようと思えばぐるっと遠回りして、長い距離を歩かなければならない。一見して近い星と星が、何万光年も離れているようなものだ〉。密かに思いを抱く同じ高校の先輩に、長いあいだ気持ちを伝えることができずにいたアキは、あるとき親友のトーコから、両想いになるおまじないを聞き、半信半疑のまま、実行する。と、はたして効き目があったのか、その直後、憧れの先輩である海野と知り合う幸運に恵まれるのだった。アキの男友だちであるシュンは、海野のことを良く言わないが、しかし、それには耳を貸さず、彼女は、だんだんと恋の成就にまつわる噂話に、はまっていく。そうして訪れる苦々しい結末を含め、青春ミステリの小品として、なかなかに据わり良く、まとまっていると思う。作品の肝要は、やはり、片想いの悩みを描いている点にある。くわしくは述べないけれども、これはなにもアキに限った話ではない。恋は盲目というほどに一途なエモーションは、たいてい、自分がまっすぐに歩いているつもりでも、他人から見れば、間違っているような道順をとらせてしまう。客観的には論理的ではないことも、主観的には筋が通っているということもありうるわけで、たとえば先に引いた箇所の〈一見して近い星と星が、何万光年も離れているようなものだ〉という部分が、大げさな誇張ではなくて、切実な問題として感じられてしまうのも、この場合であり、それを、純粋とするか、歪みとするか、の線引きはきわどく、こうした予断が、物語のなかでトリックを為し、いかにも痛切なラストの一言を導く。

 『妖精の学校』について→こちら
 『少年検閲官』について→こちら
 『「ギロチン城」殺人事件』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書(07年)
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