ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年08月11日
 ナンバMG5 11 (11) (少年チャンピオン・コミックス)

 小沢としおの『ナンバMG5』の健全さは異常である。いや、誤解を減らすため、より正確を期していうと、世間一般には程度が低いとされている(あるいは程度が低い人間が読むと思われているに違いない)ヤンキー・マンガのひとつが、いま現在、幾千もある少年マンガ群を一並びにし、その内容の健全さを比べたときに、おそらくはトップクラスに入ってしまう事実が、たとえば異常な事態だといえるとしたら、それは社会やサブ・カルチャーの傾向に問題があるからなのであって、けして『ナンバMG5』というマンガの、そして作者の責任ではないということだ。では、その健全さはどこからやって来ているのか、といえば、硬派を描くという一点に尽きる、と思う。むろん、硬派なんて死語だろ、って言われれば、そうかもしれないけれど、結局のところそれは、ある言葉を死語にしたい人びとの方便に過ぎないのだから、かならずしもかかずらう必要はないし、また、硬派を描くというのは、作中から女性の登場人物を排除する、ということもでない。むしろ、そうして成立されたホモ・ソーシャルな空間を硬派の世界と誇るのも、できれば関わりを持ちたくない類の錯誤であろう。さて、この11巻では、なんといっても、難破家の長男である猛が、いよいよ働きに出ることになるよ、と、その就職活動が最大のトピックである。いちおうはスロットで稼いだ金を家に入れている猛であったが、自分がニートと変わりないことを家族から指摘されたのにショックを受け、真面目に仕事を探すべく、一念発起する。今日においては、もしかすると、たかだか家族に言われたぐらいのことで、ポリシーを曲げ、仕事に就く人間をこそ、だせえ、と見なす向きもすくなくはないかもしれないが、ここはまあ、いっけんギャグ調の展開ではあるけれども、伝説のヤンキーとまで畏れられる男を、ペットショップのいちアルバイトに就かせてしまうのは、じつは根の真面目さとプライドの高さ以外の何ものでもないことに注意されたい。さいしょは動物の世話なんて〈カマくせぇ〉と馬鹿にしていたのが、働くうちに〈店長がワン公に熱い男なんでな オレも気合い入れてやってんぜ!〉と変わるのも、他人の真面目さとプライドを認めることのできる器量を感じさせる。それにしてもクソみたいな人間はどこにでもいるんだな。〈いい加減に金もうけだけを考えるブリーダー〉篠崎の登場は、難破家の愛犬である松の悲しい出自と深く関わっており、その腐った人間性に対してどう向き合っていくのか、次巻、猛や剛の硬派の見せ所である。

 10巻について→こちら
 9巻について→こちら
 8巻について→こちら
 5巻について→こちら
 4巻について→こちら
 3巻について→こちら
 1巻について→こちら

 1話目について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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