ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年07月11日
 火事と密室と、雨男のものがたり

 前回の事件を通じて松浦純菜と知り合った、奇っ怪な運命の持ち主である八木剛士の周辺が、再び騒がしくなる。同級生の自殺、そして連続する放火事件、両者の間に関係性はあるのだろうか。雨の降らない街に雨が降るとき、また誰か人が死ぬのであった。と、この『火事と密室と、雨男のものがたり』は、『松浦純菜の静かな世界』の続編にあたるわけだが、『松浦純菜の静かな世界』で主役級の活躍をみせた八木の、そのルサンチマン野郎ぶりが、とにかくすばらしく、自虐的な妄想が暴走するchapter6には、大笑いした。ばっかじゃねえの。いや、しかし反面、八木の屈折しまくった内面に感情移入しながら、読み進める自分というのもいるわけで、まあそこいらへんは、なんて厄介な、アンビバレンツなんだろう。とはいえ、作者である浦賀和宏はべつだん、根暗な人間や弱者を特権的な立場に持ち上げ、それに対する読み手の共感をもって、リーダビリティを確保しようとしているのではない。むしろ、そういった人間が持ちえる八方塞がりな自意識と、そういった人間を踏みにじる側における人間の自意識とを、ほぼ等価に捉まえることによって、世界そのものが持つ無情(無常)さを、くっきりと際立たせる。つまり、どのような人間もクソであり、生きる価値などない。しかしそれは、どのような人間にも希望が宿り、生きる価値が訪れる、ということの言い換えになりうるわけだ。が、それっていうのは結局、生きる価値や救済なんてのは、たかだかその程度のことでしょう、という残念な感じの言い切りでもあるのだった。ニヒリズムに近い冷酷さと、痺れるほどの青臭さは、そういった逡巡からやって来ている。

 『松浦純菜の静かな世界』についての文章→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(2) | 読書。
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読書記録-[Jul 15,2005]
Excerpt: 火事と密室と、雨男のものがたり 浦賀 和宏  浦賀和宏氏の作品を手に取るのは実はこれが初めて。『ファウスト Vol.5』で「あなたとここにいるということ」を読んで、なかなか私の嗜好にフィッ..
Weblog: Megurigami Nikki
Tracked: 2005-07-15 21:21

浦賀和宏「火事と密室と、雨男のものがたり」
Excerpt: 本日ご紹介するミステリーは、浦賀和宏さんの「火事と密室と、雨男のものがたり」です。以前に紹介した、「松浦純菜の静かな世界」の続編です。前作を読んでから3ヶ月も経ってしまいました。 ●あらすじ八木剛..
Weblog: フォーチュンな日々
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