ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年06月28日
 いよいよ話が動き出してきた、という感じのJDCトリビュート小説『トリプルプレイ助悪郎』第二回は、『月刊少年シリウス』8月号(創刊第2号)掲載で、前回は小冊子付録という形態だったのだけれども、今回は他のマンガと並んで誌面にべたーっと印刷されている。だからといって、マンガと同じ扱いというわけではないのは、巻末のコメント欄に、マンガ家陣のものはあるのに、小説家陣のものは載っていないことから、容易に想像できる。なんだか微妙な線引きだ。

 現在は行方不明中の高名な小説家である髑髏畑百足の、その長女髑髏畑一葉もまた小説家として生きているが、それほど知られた作家ではない。その彼女のもとに、5年ほど前「一回の盗みにつき三人殺す」というセンセーショナルな手口でもって世間を騒がせた大泥棒刑部山茶花(通称スケアクロウ)から、一通の犯罪予告が届く。今は百足のかわりに、こちらもまた小説家であるが一葉よりも認知度の高い次女の二葉が暮らす、裏腹亭のどこかに隠された百足の最後の作品を盗みにやってくる、というのだ。かくして裏原亭に集う関係者たち。彼女たちの前に姿を現したのは、警察の要請によって日本探偵倶楽部から派遣された、スケアクロウとは因縁浅からぬ探偵、海藤幼志であった。

 まだ犯罪は起きていない。が、しかし、すでにここの段階で(第一回のときにも書いたが)これがじつに西尾維新的なテーマ、つまり主体の固有性(オリジナリティ、絶対性の有無、入れ替え不可能性の有無)を扱ったものであることは、たとえば一葉と海藤幼志の、屈折した内面から伺うことができる。また、その表記のされ方である。一葉は、あくまでも髑髏畑という所属から自らを切り離そうとする、そういう彼女の意思が働いているみたいに「一葉」という名の部分だけで表される。反面、海藤幼志は、規定の概念に縛られることのない個の存在であることを主張するかのように、「海藤幼志」というフルネームにこだわる。そうしたふたりの屈折が、おそらく「一回の盗みにつき三人殺す」三重殺(トリプルプレイ)の悲劇を、物語に誘い入れることになるのだろう。

 第一回「唯一」についての文章→こちら


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 読書。
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