ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年06月28日
 特務咆哮艦ユミハリ 1 (1)
 
 1回目読んだときは、正直よく話がわからなかった。富沢ひとしはもう駄目なのかもしれない、と思った『特務咆哮艦ユミハリ』であったが、2度、3度と読み返すうちに、その世界観とでもいうべきものが、朧気ながら見えた。すると、4度目、5度目と読み直すのが楽しくなるのだから、ほんとうはよく出来ているのかもしれない、と自分内の評価が見事に翻ってしまったのだった。

 なぜか理由は不明だが、さまざまな時代を生きる人間たちが同時に存在し、それぞれの覇権をめぐり戦いが行われている長崎の海。大正時代の住人である正一少年を乗せた調査船が、鎧武者の襲撃を受ける。渦中、第三の勢力であるらしい戦艦ユミハリの砲撃により調査船は沈む。海に落ちた正一少年と、その妹たちはユミハリに拾い上げられるが、安住のない海上では、またべつの時代の艦影が接近していた。そして目の前にある灰と煙に覆われる阿蘇の山には、土偶の戦士たちが待ち構えている。

 このマンガの構造を担っているのは、そのような各時代人たちのバトルロイヤル的な展開ではない。彼らの戦いに、それよりもさらに先の時代から来た未来人の存在が絡んでいる点である。その身なりが宇宙服であるように、彼らは、本来であるならばメタ・ポジションにいなければならないわけだが、しかし、過去の人間たちと同様の立場に甘んじている。つまり、ここに描かれているのは、メタ・ポジションがいったんの肯定ののちで否定される、そういう多層的に見えながらも、じつは圧倒的にフラットな時空なのである。

 どうしてこのような状況が生まれたのかとか、未来拡張というキーワードが何を指すのかとか、謎(伏線)があちこちに散りばめられているけれども、富沢ひとしのマンガの場合、それらを回収する手際を読むよりは、そういった謎(伏線)自体を含めて成り立つ世界観(雰囲気)自体が肝なので、どうせまた着地点はグダグダになるのだろうという予測のもと、その魅力の十分に発揮された新作だといえる。


posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ。
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