ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2018年02月16日
 魔入りました!入間くん 4 (少年チャンピオン・コミックス)

 それ自体の良し悪しはさておき、ギャグのようだったマンガがシリアスなモードに変調する際のダイナミズムを、この西修の『魔入りました!入間くん』の4巻は持っている。不幸な環境で育ったため、どんなにひどい災難にも慣れてしまった少年、鈴木入間だったが、まさか身勝手な両親が悪魔に自分を売り飛ばしてしまうだなんて思わなかった。悪魔とは、比喩でも何でもなく、あのおそろしい魔界の住人のことである。魔界でも屈指の悪魔、サリバンに買い取られた入間は、しかし、サリバンの孫として大切にされ、彼が理事長をしている悪魔学校(バビルス)に通うこととなるのであった。

 ともすれば『小公子』のヴァリエーションであるような設定を借り、ファンタジーの世界に入っていった主人公が、人間であるという正体を隠しつつ、気が置けない異能の存在たちと騒がしい学園生活を繰り広げていく。と、ひとまずは概要を述べられるであろう。持ち前のおおらかさで価値観のまったく異なった魔界での暮らしに順応しつつ、ある場合には人の良さで魔界のルールを掻き乱してしまう。そのトリックスターぶりが、エリートのアスモデウスや周囲から疎まれていたクララ等々、愉快な仲間を引き付けるのである。

 3巻、4巻と描かれているのは、通常の学園ものにおけるクラブ活動編といえる。新入生としてクラブ活動に相応する師団(バトラ)に従事しなければならなくなった入間は、魔力が乏しい上級生のキリヲに共感し、彼が1人で所属している「魔具研究師団」に入団するのだった。もちろん、アスモデウスとクララも勝手に付いてくるわけだ。が、一見気が弱そうな印象だったキリヲが、実は悪魔学校全体を巻き込むほどの後ろ暗い目論みを果たそうとしており、その目論み、そして、その目論みを阻止すべく奮闘する主人公の姿にシリアスなモードへの変調が現れている。

 このとき、参照されたいのは、悪魔学校の生徒会長であるアメリが、かつて入間に投げかけた問い、入間にとっての「野望」とは何なのか、だろう。「野望」は、自分が成し遂げなければならない「夢」の言い換えでもある。入間の「夢」それは具体的に示されているものではない。けれど、キリヲの「野望」との対決を通じ、わずかにも確かにも垣間見られるものとなっている。そう、他人に絶望を強いようとするキリヲに入間が向けた〈僕は絶望しない(略)全部拾いたい 僕は全部を諦めない〉という断言が、ひたすら頼もしいのはどうしてなのかを軽視してはならない。

 非情であるはずの悪魔と人間とが和気藹々できる程度には、ゆるいマンガである。そのゆるさは、どんな悲惨な目に遭おうとぐれることがない主人公、入間の資質を抜きにしては成り立たない。とにかく、めげない。ポジティヴと判断される資質は、シリアスなモードに変調したところで損なわれることはない。『魔入りました!入間くん』の一貫性にほかならないのだし、それこそが人間としては本来間違っている両親によって突き落とされた困難をくぐり抜けることと悪魔としては本来正しい周囲の存在に何らかの感化をもたらしていくこととを並列にしているのだ。
posted by もりた | Comment(0) | マンガ(2018年)
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