ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2018年01月19日
 昭和ファンファーレ(2) (BE・LOVEコミックス)

『明治緋色綺譚』及び『明治メランコリア』で、明治の時代を背景に少女の成長を波瀾万丈なラブコメへと落とし込んだリカチだったが、『昭和ファンファーレ』では、昭和の初期を舞台にし、正しくビルドゥングス・ロマンとなるような筋書きのなかに少女の自立を描き出している。

 大人にしてみれば何の役にも立たない少女にとって、たった一つの武器は、その歌声のみであった。幼少編といえる1巻と2巻では、ヒロインである水瀬小夜子がトーキー映画に出会い、歌声で世に出ることを夢見、スタァ(スター)を目指すまでが描かれる。並行して紐解かれるのは、どうして寿司屋の娘にすぎない小夜子に類い希なる才能が備わっているのかという謎だ。現在の環境が母親の再婚によるものであること、本当の父親が別にいることは、物語の一番最初に明かされているのだけれど、実はそれ以上の運命を背負っていたことが、彼女と映画の世界とをより近づけていくのだ。

 先立つ明治のシリーズがそうであったように『昭和ファンファーレ』でも階級や格差の表現はわりとはっきり出ている。スタァを目指す小夜子の動機に金銭への憧れがあることは隠されていない。しかし、あくまでも寿司屋の娘として育てられている小夜子に課せられたイメージは、中流家庭ぐらいのものにとどまるであろう。貧困から逃れようとする決死の姿は、いや、むしろ、小夜子のライヴァルにあたる小鳥遊月子に具体的である。とはいえ、小夜子も月子も、孤児であるような立場に置かれている点に違いはない。そして、それは紛れもなく裕福な者と裕福ではない者との段差から生じているのである。

 しかし、目を引くのは、不幸に浸るよりも幸福を手に入れようとする小夜子と月子の力強さだ。二人の力強さが、いくらでも暗くなりそうな作品に明るい光を当てている。悲劇に陥りかねない局面において前向きな展開を切り開いていくだけの希望となりえている。
posted by もりた | Comment(0) | マンガ(2018年)
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