ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2018年01月13日
 ストーナーやドゥームのファンだったなら、誰もが一度は抱く夢であろう。SLEEPのライヴというのは。しかし、それがまさか叶うとはな。震撼のSLEEP、初来日公演を観るため、1月12日、恵比寿リキッドルームにて行われたLEAVE THEM ALL BEHIND 2018へと足を運んだのだけれど、ぬおお、これが、これこそがストーナー・キャラバンの実体か。脳みそを攪拌されるかのような高濃度の演奏に諸手を挙げるしかねえ。とてつもないステージを体験したのであった。

 ヘッドライナーのSLEEPに敬意を表したのか。目下の新作である『DEAR』のモードを踏襲しているのか。オープニングのBORISも徹底したドローン仕様で、体が震えるほどの低音を唸らせていった。が、ある意味で折り目の正しいBORISのそれとはまた位相の異なったSLEEPのグルーヴに圧倒されてしまう。90年代に3枚のアルバムを残し(さらにはラスト・アルバムとなった『JERUSALEM』の完全版にあたる『DOPESMOKER』が後にリリースされ)伝説と化したSLEEPである。近年、ライヴでの活動を中心に再結成されたわけだけれど、これほどのものとは思わなかった。想像を遥かに超えている。そのすさまじさは正しく奇跡に値した。

 1曲目から仰け反る。「DOPESMOKER」だ。本来であれば、1時間もの長さを持ったナンバーだが、その前半のパートがステージに姿を現した3人によって体現されていく。マット・パイクのギターは、淡々としながらも意外なほどに躍っていて、重たさと鋭さの同居した1音1音に耳をつんざかれる。アル・シスネロスのベースは、ひずんだ低音を怒濤のごとく轟かせると、難なく抑制し、ストーナー・キャラバンのイメージを、より立体的にしてみせるのだった。オリジナル・メンバーではないものの、NEUROSISでも辣腕を振るうジェイソン・ローダーのドラムは、後ろに引いているようでいて、痛快無比な迫力を手加減なしに加えてくるのである。

 他のメンバーに何かを要求したりせず、各人が自分のフォームを貫いているふうにしか見えないのに、それが互いに息を吐くそばから息を吸うかのようなアンサンブルを作り上げていたことに舌を巻く。「DOPESMOKER」のショート・ヴァージョン(とはいえ、20分ぐらいはある)からの流れを途切れさせないまま、セカンド・アルバムの『HOLY MOUNTAIN』を中心にしたセット・リストへと移行するのだったが、気の抜ける場面が一個もない。上半身裸で腹のでっぷりと出たおっさんにすぎないマット・パイクがどうしてすげえ格好良く感じられてしまうのか。音楽そのもののマジックでなければ説明がつかない。美醜の判断を蕩けさせるかのような恍惚を高濃度の演奏は呼び込むのであって、生のそれはスタジオ音源の何倍も強烈だった。

 ともすれば眠たいと錯覚されるスローのテンポを基本としているのもあり、スタジオの音源においてはテンションの高低とサウンドの質とがどれだけ密接なのかわからないところがあった。しかし、実際にライヴを体験してみると、一心不乱のテンションがサウンドの質を支配していることがわかる。派手さはまったくないにもかかわらず、ダウナーというよりアッパーだと叫びたくなる展開が繰り広げられていく。

 ライヴの終盤、再び「DOPESMOKER」が召還される。このとき『HOLY MOUNTAIN』を『DOPESMOKER』がサンドイッチした構成であることが明らかとなった。個々の楽曲はもちろん、紛れもなく独立しているのだけれど、全編に通底したグルーヴがある。リフの厚みがある。ふんだんにある。それが全体を1つの巨大なヴィジョンとして総括している。油断したら丸呑みにされそうな激流のヴィジョンである。およそ90分の内容に、SLEEPのすさまじさを思い知る。
posted by もりた | Comment(0) | 音楽(2018年)
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