ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年06月22日
 『コミックバンチ』NO.30(今週号ね)に掲載されている松本次郎の読み切り『Hale no sola sita』は、同誌の企画「My Best Love Song 2」のために描かれたものであり、その、さまざまなマンガ家が各人にとってフェイヴァリットな邦楽曲から受けたインスピレーションを基に作品をつくりあげる、というシリーズは、これまでにもけっこうな良作が揃っているので、いつか単行本でまとまってくれると嬉しい。さて、『Hale no sola sita』のベースとなっているのは、PE’Zというインストゥルメンタル・バンドの同名ナンバーで、つまりは具体的な歌詞がない。したがって、サウンドによって起動させられたイメージの拡がりから、かなり独特な解釈が為されているのだけれども、アーティストのセレクションはもとより、そういった試みのあたりにも、この作者のセンスがよく出ているように感じられるし、日常と戦場が隣り合わせで並列されるパースペクティヴの狂った(あるいは逆に正確な)世界観は、松本次郎の作品にお馴染みなものだといえよう。〈生き残る為には「人間」を捨てなければならない / だけど「人間」に再び戻れなければ生き残る意味なんてまるでないんだ〉。女子高兵と呼ばれる、外見上は女子高生にそっくりな、巨大兵器に乗ったまま前線から逃亡したムラカミ少尉を、同じ小隊の女子高兵たちが追う。そのなかには、彼と同郷で幼馴染みの、タキガワ中尉も含まれていた。故郷の町が破壊され、知人の家族が殺されたことから、〈あいつの目的は多分……思い出の場所を全て消しちまう事なんじゃないか…〉と推測するタキガワ中尉であったが、はたしてそのとおり、女子高兵に乗り続けることで気の触れたムラカミ少尉は、自分自身の存在を否定すべく、過去に関わったものをぜんぶ、抹消しようとしていた。もちろんそこには、タキガワ中尉ら同じ女子高兵の小隊も含まれている。PE’Zの元曲が持つ躍動感は、銃撃戦や肉弾戦を繰り広げるアクション・シーンに、ホーン・セクションが織り成すメロウなトーンは、冷めた感情と渋い展開に託されている、といった印象だけれど、作画のうえでは、女子高生がハードボイルドのパロディをやっているふうにも見える、そのスラップスティックなギャップを洒落に終わらせず、先に引いたモノローグ〈生き残る為には「人間」を捨てなければならない / だけど「人間」に再び戻れなければ生き残る意味なんてまるでないんだ〉のうちに示されているようなところにまで持っていく、要するに、対置の表現として深くテーマに直結させているのが、やはり、にくい。

 短編集『ゆれつづける』について→こちら

・その他「My Best Love Song」の作品
 海埜ゆうこ『君という花』について→こちら
 こうの史代『小さな恋のうた』について→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
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