ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2005年06月19日
 ZETMAN 5 (5)

 『ウィングマン』が、最後の最後までドリームノートの奇跡に救われたように、夢から覚めないヒーローを描いていたとしたならば、『ZETMAN』には、夢を見ることのないヒーローが描かれているといえる。大がかりに仕掛けられた罠に見事ハマってしまった大富豪の御曹司コウガ(高雅)は、絶体絶命の危機に陥る。そこで彼が聞かされたのは、プレイヤーと呼ばれる偽造人間たちの誕生の秘密と、欲望から生じたかなしい悲劇であった。コウガの胸中に訪れるのは失意であるが、しかし、それでも心は折れることがない。彼には彼の正義があった。それは、ただひとり生き残った少女を無事に家族のもとへと送り届けることである。当初より、正義とは何か? 悪とは何か? といった問いかけが、登場人物たちを追い詰めるマンガであるけれども、それはたぶん価値観の多様化によって、絶対的な正義や悪として規定されるイデオロギーが消失してしまった、そういう現代の風景を反映しているのだと思うが、目の前のか弱き人命を救うという一点だけは、まるで遵守されるべき使命のように機能している。ここまでのストーリーにおいて、それこそが、おそらく作者が提出しようとする、人としての正義なのだろう。ようやく気づいた。だが、しかし、そのほとんどが報われてはいないところに、より複雑な構造を見て取る。つまり、誰かを助けたいという夢が叶うことのないのが現実であったとして、それでも正義はまっとうできる、まっとうされているといえるのだろうか、という疑問が、正義は絶対にあるという命題と、つねに反証し合いながら同時進行しているのである。この巻のラスト、コウガの〈僕は何処にいくんだろう…〉という呟きは、そのまま「正義は何処に」という言葉に置き換えられる。なぜならば次巻、物語からはしばらく姿を消していた、コウガと対を為す、もうひとりの主人公ジンが心の折れた場所から再び動き出すのだった。

 第4巻についての文章→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(1) | マンガ。
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Excerpt: 今連載中で以前に紹介しなかったものの話なんぞを。結構読んでるな俺。あ、そうそう、今更だけど「ヒカルの碁」がおもろかった!「スラムダンク」ってのを読んでみようか思案中。[ONE PIECE/尾田栄一郎]..
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