ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2007年06月11日
 『ヤングマガジン』NO.28に掲載されている「第56回ちばてつや賞」大賞受賞作、笠原滋の『ヒトイロ』は、けっして派手目な作品ではないけれども、とても質の高い、そういう内容であったよ。小学生のときに受けたショックのため、〈あれ以来 オレはまともにヒトのカオ見ていない……かわりにオレの眼に映るのはもやのようなヒトのイロばかり…〉つまり自分外の人間の感情というか内面が、色彩のかたちで透視できてしまうので、できうるかぎり他人に干渉しないようにして高校生活を送る主人公が、ひょんなことから、ささやかだが、しかしたしかな、友情とでもいうべきものの価値に気づく、までを描く。たとえば〈ラッシュの人ごみは苦手だ〉と、こうした心持ちは、とくにこのマンガの主人公のような能力がなくとも、思春期を中心に多くの人間が体験しうるものであり、それがネガティヴなほうへ、際限なく、どんどん転がっていくと、まあ90年代の頃に流行った、誰とも何も共有できないとでも言いたげな、自閉的で排他的な思想に行き着いてしまいがちなものだが、ここには、その傾斜の途中で、転落者を、下から上へと、しっかり押し上げる力が働いており、それがそのまま物語の魅力となって、現れている。最初にいったとおり、絵柄も含め、やや地味というか、あっさりとした線の作風ではあるけれども、総体的に説得力が、ある。ところで、欄外の(全マンガ家共通の)アンケート「全巻そろえたお気に入りのマンガといえば?」というのに、この作者は、『クローズ』です、と答えているのが(たぶん高橋ヒロシのだよね)、テーマ性の部分はともあれ、表面的には、ほとんど影響を感じさせないだけに、とても新鮮だ。
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | マンガ(07年)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバック