ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2016年11月11日
 Re:ロード ( 1) (ニチブンコミックス)

 佐々木拓丸はフィジカルなアクションの描写に盛り上がるものがあると思う。しかし、物語を動かす際、登場人物が内面に何を抱えているかの描写に傾いていくきらいがある。前者に作家性がよく出ていると取るか。後者に作家性がよく出ていると取るか。無論、両者がきっちりと噛み合っているのであれば、それに越したことはないのだが、ヘヴィであったりスリリングに感じられるところが多いのは、おそらく、前者であろう。バンドマンを題材にした『Eから弾きな。』も、実はそうだった。では、新作にあたる『Re:ロード』は、どうか。

 1巻を読むかぎり、『Re:ロード』は、ハードなヴァイオレンスである。ヤクザに復讐を果たそうとする元刑事がヤクザに追われた少女を守るためにヤクザと激しい衝突を繰り広げていくのだ。『極道つぶし』や『SINfinity』の作者が、再びヴァイオレンスの世界に帰ってきたともいえる。魅了されるのは、やはり、銃撃戦や肉弾戦が躊躇いなく人を死なせていくというフィジカルなアクションの描写であって、それが熱量は高いのに殺伐としたテンションを作品に与えている。他方、元刑事である乾昌吉の内面や思考は、それが迷いを見せれば見せるほどに展開の速度を間延びさせてしまう。ただし、そうした迷いによって生じた間のゆるみが、『Re:ロード』のストーリーあるいはテーマにとっては重要なポイントになりえてもいる。

 乾昌吉は、明らかに欠落を抱えた男として現れている。妹をヤクザに殺された過去が現在の彼を表情の乏しい存在にしているのだ。その主人公が、ヤクザに義父母を殺されながらも逃亡を果たした少女、日高真を救うことになったのは偶然でしかない。そして、彼女を追うヤクザが、乾の妹の死に関与した冱們會であったこともまた偶然にすぎない。これらの偶然は、もちろん、話を運ぶ上での都合の良さを兼ねているのだけれど、注意されたいのは、そのような偶然の連なりに乾の欠落が間違いなく暗示されていることにほかならない。なぜ、乾が偶然出会っただけの少女を守らなければならないのか。乾に因縁のある冱們會が相手だという理由は、あとからやってきている。乾の抱えている欠落が、そうさせたのだと考えるべきなのである。

 乾は唯一の肉親である妹を失った。家族を失った。同様に身寄りをなくしてしまった真の姿が、彼の目にどう映っているのか。彼の欠落にいかなる働きかけをもたらすのか。確かに彼の内面が言葉や回想に描写されるとき、コマのスピードは落ちる。だが、それはヴァイオレントな世界そのものに対する抵抗のようにも思われる。乾と真の関係を、冱們會の刺客であるシンは〈現状この2人はお互いが今を生きる為の唯一の糧なんだ〉と、いち早く見抜いてみせるが、しかし、日高真とは、何者なのか。どうして冱們會に狙われているのか。1巻の段階ではっきりとしたのは、乾の正体であって、伏せられ続けている真の来歴は、今後、彼女が物語のなかでの影響力を大きくしていくことを予感させる。
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