ときめいて死ね!!
いいや、戦って死のう。
2016年11月09日
 Change of Fortune

 一般的には90年代に一発当てたバンドということになるのかもしれないが、それ以前は米のインディ・シーンをライヴで叩きあげてきたバンドとして紹介されていたんだってことを思い出したね。まさかのSOUL ASYLUM、21年ぶりの来日公演(11月8日)を観ての感想である。

 さすがに21年前は大昔だよ、と述べるしかない。80年代からミネソタ州ミネアポリスで活動していたSOUL ASAYLUMである。アメリカン・オルタナティヴやグランジのムーヴメントに乗ってブレイクを果たしたけれど、次第に人気は陰っていき、ここ最近はかなり地味な存在になっていた。重要なメンバーの死去もあった。現在、オリジナル・メンバーと呼べるのは、フロントマンのデイヴ・パーナーのみだ。『THE SILVER LINING』(2006年)以降、日本盤のリリースがなくなってからもずっと好きなバンドだったが、正直なところ、期待値はちょっと低めで会場のTSUTAYA O-EASTに足を運んだのであった。

 しかし、裏切られたぞ。良い意味で裏切られた。全然ロートルじゃないじゃん。パフォーマンスもエネルギッシュだし、現役のオーラがビカビカしていた。観客の入りは寂しいものだったが、素晴らしい盛り上がりをもたらすまでのステージが繰り広げられていく。セット・リストは、ニュー・アルバムである『CHANGE OF FORTUNE』(2016年)を中心に組まれ、昔の名前で出ています、の懐メロ大会に陥っていなかったのも特筆すべき点であろう。『CHANGE OF FORTUNE』は、決して悪い作品ではない。デイヴ・パーナーの歌い回しは相変わらず特徴的なのだけれど、プロダクションやアレンジがあと少し練られていたなら、もう一段階か二段階ぐらいフックが強まったのでは、と物足りなさを覚えるものがあった。それがライヴ・ヴァージョンでは、スタジオ・ヴァージョン以上の厚みと勢いが演奏へと加わっているせいか、はじけるようなアピアランスを数倍増しにしていたのだ。

 パンキッシュなナンバーでは、挑発的にギターのリフが飛び交い、グルーヴを重視したナンバーでは、ヘヴィな面の出たリズムがのしかかる。『CHANGE OF FORTUNE』に収録された「DON'T BOTHER ME」は、軽やかなアコースティック・ギターを入れたナンバーだが、カラッとしたメロディがなぜかエモーショナルに響くというアメリカン・ロックの奥義を会得したものとして印象を濃くしていた。

 もちろん、過去の代表曲も披露された。実は自分は最大のヒット曲にあたる「RUNAWAY TRAIN」って、そんなにピンとこなかったタイプなので、『GRAVE DANCERS UNION』(1992年)からのナンバーでは、疾走するスピードに切なさの入り混じった「WITHOUT A TRACE」や「SOMEBODY TO SHOVE」に、おお、という興奮を抱く。楽曲のフォーマット自体はシンプルなために決して古びた印象はない。どころか、生き生きとした演奏が楽曲に内包されている普遍的な魅力を一層際立たせていた。メンバー4人のコンビネーションもばっちりで(もう1人、サポートでギターが加わる場面もあったが)ギター、ベース、ドラム、そして、ナイスなヴォーカル、これだけでいかなる魔法が作れるのかを見事に証明していたのである。

 個人的なハイライトは、『LET YOUR DIM LIGHT SHINE』(1995年)に収録された「MISERY」が演奏されたときだ。この日一番の合唱も「MISERY」で起こった。振り返れば、21年前の来日公演は『LET YOUR DIM LIGHT SHINE』のリリースにともなうものであった。確か当時『ロッキング・オン』の鈴木喜之が批判していたと記憶している(記憶違いだったら申し訳ない)が、絶望を歌うことでオーディエンスの共感を得てしまったアーティストが、その共感に追い詰められ、さらに絶望を深めていくという不幸を(たとえ皮肉であったとしても)モチーフとした楽曲に、オーディエンスが共感を寄せることは拭いがたい矛盾を含んではいる。だが、それは絶望が単なる行き止まりではなく、死への憧憬にとどまらないこと、とどまってはならないことをも同時に示していたはずである。グランジの時代が遠くなった現在もなおオーディエンスに投げかけてくるかのようなリアリティを「MISERY」は宿したままだった。

 長いキャリアのバンドである。初期の楽曲をほとんどやらなかったのは仕方がないとはいえ、あの曲やって欲しかった、この曲やって欲しかった、の気持ちは現れてしまう。しかし、不満ではないよ、と思う。非常に堪能させられたショーは、もっと、もっと、という欲求を呼び覚ます。優れていたことの裏返し。必然にほかならない。

 バンドのオフィシャル・サイト→こちら
posted by もりた | Comment(0) | TrackBack(0) | 音楽(2016年)
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